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黒き天使の異邦人
第7話 霧の大敗北
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『重力震!? 私達の機関が動いた物じゃない!』

「空間が割れて何かが転移しようとしているわ!!」

『ブ、ブラックエンジェル!? どうして!?』

「あ、ああ、ぁ……」


 まるでガラスか何かが割れるようにして空が割れ、そこから姿を現したモノを見た私はあの日の恐怖が蘇る。
 直接対峙した訳でもないのに伝わってくる圧力、絶対的な強者にしか許されない見ただけで相手に恐怖と言う感情を与えるその姿、数年前に私が見たままのブラックエンジェルがいた。

 それからの展開は何時かと同じように一方的なものだった、全く効果のないこちらの攻撃に圧倒的としか言えない向こうからの攻撃、かつて私たちが人類にやった事を今度は私達が得体のしれない存在にやり返されると言う事、これに私は恐怖しか感じず戦場の只中だと言うのに思考を停止させていた。


『何をしているのアタゴ!撃ちなさい!!』

「た、タカオ、お姉ちゃん……」


 姉であるタカオお姉ちゃんからの叱責が飛び、私は慌てて浸蝕弾頭兵器を全て打ち出していくけれど、私が少しでも我に返った時には艦隊は半壊以上の損害を受けていて、生き残っている重巡や大戦艦達が散発的に足の引っ張り合いを来ないながら反撃と言う、最悪な展開を迎えていた。
 もうこの戦闘はダメだ、そう思った瞬間にブラックエンジェルは急に加速して私の目の前で急停止すると二つの不気味な瞳で見据える。


「ひっ……」


 間近に迫ったブラックエンジェルに睨まれた私は、情けない悲鳴に似た声を上げて腰を抜かして座り込んで人間の娘のように体を震わせていた。
 これが、死への恐怖、自分の中で冷静に今の状況を分析する余裕もあったけど、私は何もできずに奴を見ることしかできなかった。

 そうしている内に奴は私に興味を失ったのか視線を外して、翠の翼を広げてレーザーのシャワーと言うべき大量のエネルギー弾を撃ちだす。
 後から分析して分かった事だけどこれは超重力砲を拡散するように任意の方へと撃ち出す物ではないのか、そう結論が出た兵器であり私達の一部の艦の兵装に仕様の変更が出来る切っ掛けになるものでもあった。


 そうして戦い自体はブラックエンジェルの乱入と言うあまりにも予想外な出来事により、私達は惨敗、二個艦隊を投入して行われた決戦は十何年か前の人類と同じように一方的な敗北となってしまう。
 結果として私達霧は、日本近海の海上封鎖網を一からやり直しさせられる結果になって、太平洋方面の海洋封鎖は機能しなくなるという前代未聞の状況に追い込まれる形になった。


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