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戦国異伝
第二百二十一話 肥後の戦その八

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「その場合はどうされますか」
「その場合は戦の後でどうするか言うのじゃ」
「攻めるとですか」
「我等がな」
「そうされますか」
「しかし従えばな」
 その時はというと。
「その領地を安堵するとな」
「そう話してですね」
「そのうえで」
「織田家に降る様に勧めていこうぞ」
 島津の軍勢を破りそして城を囲んだうえでというのだ。
「これからな」
「畏まりました、では」
「その様にしていきましょう」
「勿論馳せ参ずれば」
 今の彼等の陣中にというのだ。
「よりよいこともな」
「国人衆に話して」
「降ることを促しますな」
「そうしようぞ」
 こう家臣達に言ってだった、信康は肥後の国人達も織田家の下に組み入れていった。その信康を見てだった。
 家康は確かな顔で唸って大久保に話した。
「あれでよい」
「肥後のこともですな」
「戦をするのでなくな」
「ああして話をしてですな」
「組み込んでいけばな」
「よいですな」
「百戦百勝はよくはない」
 家康は孫子の言葉も出した。
「百戦ではなくな」
「戦わずしてですな」
「勝つことこそがじゃ」
「最善ですな」
「竹千代はそのことがわかっておる」
「殿のお考えも」
「だからよい」
 こうも言うのだった。
「及第じゃ、完全にな」
「竹千代様がですな」
「わしの次じゃ、先が楽しみじゃな」
「ですな、この度の戦はよいことがわかりましたな」
「全く以てな」
 こう二人で話すのだった、そしてだった。
 家康は後詰でほくほくとしていた、信康は的確な采配で肥後を収めていった。それは信長が聞いても満足するものだった。
 そのうえでだ、信長は日向に向かいつつだった。傍に置いているある整った顔立ちのまだ前髪立ちの若小姓に言った、森の末子である森蘭丸成利だ。 
 その蘭丸にだ、信長は笑みを浮かべて話した。信康のことを聞いて。
「竹千代も果報者じゃ」
「よき跡継ぎ殿を得られてですな」
「そうじゃ、わしは三郎と呼んでおるがな」
「竹千代殿ではなく」
「いや、わしが竹千代と呼ぶのは一人じゃ」
「家康公ですな」
「そうじゃ、だからな」
「信康殿はなのですな」
 蘭丸もそのことを察して信長に話した。
「三郎殿と呼ばれているのですな」
「その名乗っておるからのう」
「確か祖父殿のお名前でしたな」
「うむ、広忠殿のな」
 家康の父でもあった、彼が幼い頃に家中で家臣達に殺されて世を去っている。家康にとっては悲しむべきことだった。
「それで三郎と呼んでおる」
「左様ですか」
「それでじゃ」
 また話した信長だった。
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