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ドリトル先生と森の狼達
第十幕その六

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 そのお話の後で、です。先生は思うのでした。
「いや、本当に驚きました」
「ニホンオオカミのことは」
「絶滅したとです」
「先生も思われていたのですね」
「はい、ジステンパーで」
 主にこの病気によってというのです。
「そう思っていました」
「左様ですか、しかし」
「ニホンオオカミはいましたね」
「そうですね」
「僕はここで思いました」
「何とでしょうか」
「人の知っている物事はこの世で僅かです」
 まさにほんの、というのです。
「大海の中の匙一杯です」
「その程度ですね」
「僕達は全てを知っている様で」
 その真実はというのです。
「ほんの僅かです」
「その程度でしかありませんね」
「僕は学ぶ度にこのことを実感しています」
「今回の調査でも」
「はい、そうでした」
 まさにというのです。
「この世は本当に広いですね」
「そして人が見ているものは僅かですね」
「知っていることも」
「このニホンオオカミのことも」
「まさにそうですね、そして」
 先生は日笠さんにさらに言いました。
「法律、日本の法律のことも」
「学ばれますか」
「欧州の法律とはまた法体系が違いますね」
「どうもかなり違いますね」
「欧州の学問はまずキリスト教がありますので」
 その根幹、まさに根であり幹はなのです。欧州の学問はキリスト教があるのです。この宗教の存在がです。
「神学がありまして」
「キリスト教の教義ですね」
「そして他の学問が生まれています」
「法学もですね」
「欧州の法学はローマ法とです」
「キリスト教の教義が源流ですね」
「ですから日本のものとは違います」
 その源流となるものがというのです。
「近代法ということから日本は欧州の法律を積極的に取り入れましたが」
「キリスト教が入っていないので」
「また違います」
 そうしたものだというのです。
「そのことも実感していましたし」
「日本の法学もですか」
「学びたいと思っています」
「学者としてですね」
「はい」
 ここでも先生は学者でした、まさに生粋の学者です。
「そうです」
「そうなのですね、では」
「学ばせてもらいます」
「そちらも頑張って下さい」
「法学を学ぶといっても弁護士や裁判官になるつもりはありません」
「司法試験に興味はないのですね」
「別に」
 先生は日笠さんに穏やかな笑顔で答えました。
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