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月に咲く桔梗
第3話
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 読み通りだった。彼は仰向けで読んでいた漫画を投げ捨てて布団にくるまる。


「マツについては、俺にはできません」


 いい返事が来ると期待してた優佳は、えっと小さく声を上げ、豆鉄砲を食らったかのようにきょとんとしている。布団の隙間から優佳の顔を覗いた浩徳が話を続ける。


「あいつ、誰とも付き合ったことないんだよ」


「それなら好都合じゃん」


「いや、そうじゃなくて」


 浩徳は体を起こして


「あいつ、何度も女子に告白されてるらしいんだけど、全部断ってんだよなあ」


 と、さももったいなさそうに答えた。


「えー、他に好きな人がいるとか?」


 優佳もありえないという顔をしている。


「そうではないみたい。まあ、彼女作らない主義なんだろうね」


「うーん、かたやまちゃんに猛アピールさせないとなあ」


 そう言って、優佳は部屋を出て行った。


「せいぜいがんばれ」


 と、優佳の背中に言葉をぶつけた浩徳は、落ちてる漫画を拾い上げてその続きを読み始めた。



 * *                 



 晴れの日がやってきた。

 朝からやけに目覚めがよかったので、どうしたものかと考えた浩徳は「晴れの日がやってきたからだ」と納得した。雨の日、足取り悪く学校へ行くいつもの彼とは違い、父親のような陽気さで自転車にまたがって出て行ったので、母親の美智子は今日何か特別なことでもあるのかしらと思った。

 学校での彼は、自分ではうきうきしているつもりであったのだが、普段の素っ気なさもあって、クラスメートが見てもその違いはよく分からなかった。

 ただ、目の奥がキラキラしている、と感じ取ったのは、隣のクラスから遊びに来た加賀野舞侑だけであった。    


「なんかいいことでもあったん?」


 彼女に問いかけられ、浩徳ははきはきとしながら


「久しぶりに晴れたじゃん」


 と答えた。舞侑は確かにと笑いながらつぶやく。


「ヒロって晴れの日好きだねえ。雨の日は目が灰色で染まってたし」


 そう言って外の澄んだ青空を浩徳と一緒に見つめた。顔は見えないが、きっと彼の目はこの青空のように澄んでいるのだろう。


「晴れると暖かいし、よく眠れる」


 彼が大きな伸びをした時、舞侑と目が合った。


「でも、最近はしっかり授業受けてるらしいじゃない。クラスの女の子に聞いたよ」


「あれは、青山が隣にいるとなぜかそわそわして眠れないんだ」


 へえ、と声を出した後、少しの間黙った舞侑は、周りを見て


「あの子、私どっかで見たことあるような
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