第3話
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。結月はきれいな真結びを風呂敷にあしらって
「んー、当ててみ?」
と不敵な笑みを浮かべる。
「そうだなあ」
優佳は右手で頬をさすりながら少し黙ると、土曜の夜九時にでもやっていそうな名推理をつらつらと述べはじめた。以下、その内容である。
結月の頭が良くないことは十分承知である。かなりギリギリの点数で受かったに違いない。しかも、月姫の手厳しい教育は知っているはずだから、普通なら第一志望として目指さないだろう。
ここで、「ギリギリでもいいから受かりたい」と思った動機について考察したい。
前述のとおり、結月優れた教育を目的としてこの学校を選んだわけではない。ではほかにどんな動機があるだろうか。考え得る一つは「剣道部にどうしても入りたかったから」である。なるほど確かに、結月は剣道大好き少女であるから、この推測は正しいかもしれない。だが、この月姫の女子剣道部はお世辞にも強いとは言えない。個人戦で目立った者がいるとすれば、始業式などで発表されているはずである。
これら数ある説の中で最も有力なものとして、「どうしても会いたい人がいた」説である。これを更に二つに場合分けしたものを考える。
一つは「好きな同級生が月姫を目指していたから」であるが、これが成立するとすれば、結月はすでにその生徒に何らかのアプローチをかけているはずである。せっかく受かったのだから何としてでもモノにしたいはずである。だが、それは現実に矛盾し、帰謬法により成立しないことが分かる。
もう一つは「好きな先輩が月姫にいたから」である。もしそうなら、剣道大好き少女の好きな先輩と言えば、憧れの先輩に他ならないだろう。つまり、男子剣道部に所属している人物ではないだろうか――――。
「はい、そこまで!」
最初は余裕ぶっていた結月も、話の後半になると顔をひきつらせ、優佳の名推理を途中で制止した。優佳はにやりと笑う。
「どんぴしゃだな?」
「良くそこまで分かるね」
「宮部みゆきの本を読んでますから」
めいっぱいの勝ち誇った顔にため息をつく結月を見て、優佳は身を乗り出した。
「で、どんな人?」
ここまで推理されてしまえば仕方がない。まあ、優佳ならいいか。そんな風に思って、周りに他の生徒がいないのを確認した結月は、これまでの苦労について話した。
優佳は結月の話を親身になって聞いた。結月が感情的になった時には相槌を大きくしたが、決して憧れの先輩について非難をしたりはしなかった。だが、話のところどころで気になる点がいくつかあったようで、眉間のしわが次第に深くなっていった。
散々話し終えた結月は、自分の体重が数グラム程度軽くなった気がしていた
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