クロスツェルの受難 B
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物客の最前列に紛れ込み……絶句。
弦楽器を弾きこなしていた、そこらには居ないだろう腕前の持ち主は。
真っ白な長衣を見事に着こなす、長い金髪を持った華やかな外見の女だ。
胡座の姿勢で、丸っこい楽器本体を太股に乗せ。
上部へ伸びる縦長な部分に張られた弦を、指先と弓で丁寧になぞってる。
その藍色の目と楽しそうに視線を交わしながら音楽に身を委ねてるのは。
半透明なショールの両端と鈴を、両手の中指に巻きつけた
「……クロスツェル……?」
………………だよ、な? どう見ても。
首から肩、両腕の素肌を露出して。
胸にはサラシだか何だか知らんが布を巻いてるクセに、腹部は曝して。
前面を膝下、背面を踵まで覆う絹の布を腰に巻き。
ショールと同じ素材らしき、半透明なゆるゆるのズボン? を履いて。
漆黒の長い髪を自由に遊ばせながら、裸足で踊ってる。
額には、小さな赤い宝石が付いた金のサークレット。
両耳には、大きな金の輪っかのイヤリング。
首元には金の鎖が三重に掛けられ、足首にも鈴付きの輪がはまってる。
「……………………」
見物客の前で、女顔負けの色香が漂う艶やかな笑みを振りまきながら。
髪の先から足の爪先に至るまで、全身を使ってくるくると。
軽やかにくるくると。くるくると……
…………慣れてんな、アイツ。
最後だったらしい一曲が終わって。
一際大きな歓声が、敷地の内外に響き渡る。
拍手を贈られた一同は立ち上がり、観客に向けて一礼して。
クロスツェルだけが、俺と目を合わせた。
「…………――――ッッ!!!!!!」
分かりやすく青ざめてやんの。
両腕で、顔をサッと隠して。
誰よりも速く教会の中に駆け込みやがった。
逃げたな。
化粧……、してたからなあ……。
さすがの俺でも、どう反応すりゃ良いんだか分からん。
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