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Fate/Monster
バーサーカー差し替え編
フランドール・D・A・B・H・ヴィクトリアの場合
#01
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を助けたのならば、雁夜にとって僥倖と言える。


「……いや、むしろ助かったよ。……って、ん? 臓硯のジジィをどうしたって?」
「灰にしたぞ」


 沈黙。

 サーヴァントの答えに対して、雁夜が行えたのはポカンと口を開けてその言葉を頭の中で反芻するのみ。


「……灰にした? あの吸血ジジィを?」
「ああ。覚えてないのも無理はない。私が眷獣を召喚して魔力をそれなりに使って、君は倒れ臥していたのだからな。私の眷獣達が蟲の本体を連れてきて、そのままその蟲にこの世のものとは思えない地獄を見せてから固有堆積時間(パーソナルヒストリー)を奪い尽くしたんだ」
「……固有堆積時間?」
「あぁ、やはり通じんか。存在が生み出されてから現在まで経験してきた時間の総和≠フ事だ。まあ、簡単に言えばその存在の歴史そのもの――人で言うなれば、その人の人生その物だ。固有堆積時間を奪われると対象は奪われた時間の分だけ記憶と経験を失い、肉体も退行する。そうさなぁ、君がここ二ヶ月ほどの固有堆積時間を奪われれば、二ヶ月ほど前の状態に戻る。記憶も肉体も、な」


 蟲妖怪『マトーゾーケン』
 またの名を、吸血鬼擬き『マキリ・ゾォルケン』。五百有余年を生きる、吸血鬼よりも気色の悪い怪物にしては呆気のない死。

 それを鵜呑みには出来ないが、サーヴァントの言っていることが確かならば、生きているとしても記憶や経験を奪われたらしい。ならば、暫くは動けないだろう。朝から身体の調子がよいのも、体内の蟲が大人しいか既に死んでいるからだと仮定すれば、確かに臓硯は消え失せたか、瀕死かのどちらかなのだろう。
 そんな風に雁夜が情報を纏め、反芻していると、 バーサーカーが何か思い出したように口を開いた。


「吸血ジジィと聞いて思い出した。うっかり失念するところだったよ。マスター君、君は現在、血の従者――あー、この世界で言えば死徒か? それになっている」
「……はぁっ!?」


 しかしそれは三流通り越して五流――(いや)、七流や八流と言っても過小表現ではない程にヘッポコな魔術師の雁夜でさえ知っている人類とはまた違ったヒト型の化け物。

 死徒。
 不死身に近い耐久力と、化け物としか言えない怪力、人外の魔力を持ち、人の生き血を啜る吸血鬼。あの間桐臓硯すら死徒に比べれば弱い存在と言えるほど死徒というのはかなりの化け物なのだ。


「俺が死徒ってどう言うことだよ!?」
「まぁ、不可抗力と言うべきか……。世界の境界線をぶち抜く程に強い想いをもってしてサーヴァントを喚び、それを私が聞き届けて顕現したのだ。それ程の想いを持つ者を目の前で死なせるのもアレだったのでな、私と君の第七肋骨を交換したのさ」
「お前の肋骨……?」


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