第三十五話
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彼女を制し、小声で囁く。
「こんな真っ暗な中にライトも無しで平気で入っていくなんてどう考えてもおかしいでしょ? 【普通の人間】なら何も見えないはずだよ」
「そうなんだ。おまえたちは……なんか、うん、めんどくさいわね。手続きをいちいちふまなくたって、さっさと行ってさっさと片付けちゃえばいいのに」
ブツブツ文句を言う王女は置いておいて、ポケットから携帯電話を取り出す。
黒いボディに4インチディスプレイ。そしてタッチパネルだ。
これは学校から支給されているもので、大きな液晶画面が自慢の最新型だ。学校の出入りや各教室の電子キーの解除、本の貸し出し、購買や食堂での支払いも可能。当然、学校の内外では学生証という身分証明書にもなるし、学校からの様々な連絡もすべてこの端末に送られてきてペーパーレス化に大貢献している機器なんだ。通話・通信料は激安で、当たり前だけどネット閲覧も快適で、当然ながら学校側がセキュリティ権限を持ち閲覧の制限をかけることもできるんだ。噂ではGPS機能もついているからその気になれば生徒の所在地も検索できるそうだ。おまけに通話通信履歴もすべて学校が把握しているとかしないとか言われている。
ちょっとよろしくない機械なんだけど、これが無ければ学校での生活はできない仕組みになっているから全生徒は所持せざるを得なくなっている。
なんせ、学校や教室に入れないんじゃ話にならないからね。買い物だってキャッシュレス。もちろん上限は生徒の銀行口座の預金額が上限となるから使いすぎも無くて安心。ちなみに銀行は指定されていて、学校の出資社でもある。
「この携帯はライト機能や防犯ブザー機能がついているから、こんな暗闇もへっちゃらさ。おまけに10気圧防水だから風呂に落としても大丈夫。対ショック機能もあるから、落としたってそう簡単には壊れないタフさなんだ」
誰かが聞いているのを前提で王女に状況説明する。
「へえ、……何がすごいのかはわからないけど、まあいいわ。さっさと行きましょう」
二人は玄関通路を抜け、ホールへと出た。
そこは建物1階の半分近くを使用した巨大な待合いとなっていて、かつては高価な調度品とかが置かれていたんだろうと推測できる。中央付近には受付があり、向かって左隣に2台のエレベータの扉がある。
当然、電気が来ていないから、それは使用できない。
携帯のライトを照らし、その隣にある階段へと歩いていく。床は基本的には埃っぽいけど、何人もの人の出入りがあったのがその埃の積もり具合でよくわかる。人の出入りのあった場所だけ、埃が無くなっているんだ。
最近も地下へと行っている人間がそこそこいるようだ。
「さて、階段を下りていきますか」
そういうと王女の手を握り、階段をゆっくりと下り始める。王女もおとなしく付いて
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