第三十三話
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携帯で地図を呼び出す。
地図から読み取れるのは病院と田んぼだけしかなかった。その病院名をさらに検索すると5年前までは営業していた特別養護老人ホームで、不正受給問題とかで経営者が逮捕された。その結果、彼の経営していた会社は倒産し、あっというまに債権者達に差し押さえられた。違法建築だったせいもあり買い手もつかず、現在は廃墟となっているようだ。
「こんな場所に呼ぶなんて……」
俺はつぶやく。
「漆多って人はどこに住んでいるの? 」
いつの間にかそばまで来ていた王女が問う。
「漆多は自宅組だから、学園都市の外から通ってきてる。だからあいつが指示してきた場所には何の用事も無いはずなんだけど」
「生徒はみんな外から通っているのか」
「学園都市に住んでいる人間はみんなこのあたりの居住地エリアにマンションを借りているか、自宅を持っているかのどちらかだよ。学校は学区エリア、企業の研究施設は研究エリア、住居と商業地は居住エリアにきっちりと別れているだ。目的以外に使用することは禁止事項になってる。高校生までだと半分は学園都市の外の自宅から電車通勤なんだよ」
王女はだいたい理解したようだ。
「だったらどうして、漆多はそんな場所を指定してきたのかしら」
俺が感じている疑問を彼女も指摘してきた。
「それは電話だけではわからない。確かにあんな場所に呼び出すのも、しかもこんな時間なのも変だとは思うよ。何らかの意図があるのは間違いないだろうね。……でも分かってることは一つあるんだ。それは俺はアイツに会わなくちゃ行けないこと。そして話さなければならないことさ」
王女は腕を組んで少し考え込む。
「……罠ね。間違いなく。漆多が意図したのかそれとも別の誰かかは分からないけど、悪意があるのは間違いないわよ、それでも行くの」
「もちろん。……漆多が俺に会いたがってるのは間違いないから。今まで俺はアイツを避けていたからね。もう逃げたりしない」
「まったく、仕方ないわね。じゃあ、私もついて行ってあげるわ。今のお前の力なら何も問題ないとは思うけど、日々の生活は退屈だし刺激が欲しかったところなの。なんだか面白そうだわ」
単なる興味本位で行ってたのか……。俺は少し呆れた。単なる暇つぶし気分なんだろうな、この子にとっては。俺にとってはかなりしんどい決断なんだけど。
「姫は気楽でいいな。俺はかなりタフな状況だと思ってるんだけど」
王女は笑う。
「どうせ漆多って子がそいつを虐めてる連中に拉致でもされて、お前を呼び出そうとしているだけでしょ? この前お前がボコボコにしたっていう連中の仲間でしょうね。仕返しをしてやろうって企んでるんでしょう。……しかし馬鹿な連中がいるものね。あきれてしまうわ。人間が何人かかってこよ
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