第6章 流されて異界
第124話 北へ
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比奈さんに関しては、この招待の裏に危険な事件を感じた俺が説得をして一時的に西宮へと居残りとして貰った。
但し、もしこの招待自体に危険な事件が存在して居ない、もしくはクリスマス以前に事件が解決した場合には、二十三日に俺たちと合流する、と言う約束にも成って居る。
未だ学校自体が完全に冬休みに入って居る訳でもないので、この辺りが妥当な落としどころでしょう。
既に皆で出掛ける温泉旅行と言う趣旨からは大きく外れている今回の北への旅。
そう、弓月さんが俺たちを温泉旅行に招待してくれる理由とは……。
「一時的に旅館を閉める理由は、若女将の私の従姉が病に倒れたから……なのですが……」
そして再び十八日の回想。
ハルヒのもっともな疑問に対し、僅かな逡巡。しかし、その後に普段通りの彼女。弓月桜らしい仕草で俺から僅かに視線を逸らしながら会話を始める彼女。
「女将さんが病気……。そんな所に大勢で押しかけて本当に良いの?」
相手によって傍若無人に振る舞う相手と、物の道理を弁えた常識人的な対応を使い分けるハルヒが、今回は常識人の対応でそう聞き返す。
俺が相手の時も、そう言う対応で居てくれたのなら、どれぐらい相手をし易いか考えて欲しい物だが……。
「いえ、その事に関しては問題ないのです。ただ……」
何か嫌な雰囲気を纏いながら言葉を続ける弓月さん。これ以上、彼女の話を聞いて仕舞うと、俺が何かの危険な事件に巻き込まれて仕舞う。そんな気がするのですが……。
「始まりは四年前の一九九八年――」
一九九八年十二月二十三日。あまり雪の多くない地域としては珍しく白に覆い尽くされた公園でその死体は発見された。
凄惨な現場。赤……と言うよりは黒に近い色彩で彩られた白い大地。
すわ、殺人事件の発生か、と思われたこの事件であったが、死因は死体の右手にしっかりと握り締められたナイフに因り頸動脈を切り裂いた事による失血死と判明。更に、死亡した青年……東京の大学に進学して居た蘇芳優と言う青年自身が、最近、自らの病に悩んでいた事が明らかとなり……。
単なる自殺として処理される結果と成った。
そして一年後の一九九九年。今度も十二月二十三日の朝……丁度、休日出社中の会社員たちの瞳を赤く焼いたのは……。
鐘、そしてサイレンを鳴らしながら南へとひた走る消防車の姿であった。
最初に自殺の有った公園の南に存在する一棟のアパートから上がる黒煙。
そして、
古いアパートを完全に包み込んだ炎が完全に消し去られたのは、通報から三時間経った後のお昼前であったらしい。かなり火の勢い自体が強く、火元と成ったアパートを含め周辺の商店などに延焼。ただ、幸いな事に死傷者は出火元とみられる部屋の住人。東雲
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