第6章 流されて異界
第124話 北へ
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最早、食べきる事を諦めた弁当の蓋を閉じ、朝比奈さんの淹れてくれたお茶で口の中を綺麗にしてから行う、話の流れをせき止めるかのような俺の台詞。
上手い話には裏がある。更に、今日は有希が言う何らかの事件が発生する可能性がある日。
まして、次に動き始める可能性のある弓月さんからの申し出。ここまで状況証拠が揃っていて、反対しない、と言う選択肢は存在しない。
それが例え無駄だ、と言う確信がある行為だったとしても。
その瞬間、菓子パンを食べ終わって居たさつきの形の良い眉が何かを感じたように動き、
朝倉さんが俺と、ハルヒ、そして、弓月さんの三人を順番に見つめて行く。
「ハルヒが行きたいのはこのメンバーでワイワイと騒ぎながら出掛けられる旅行なんやろう。それなら、無理にこの弓月さんの話に乗らなければならない理由はない」
そもそも、年末年始にお客のいない温泉旅館って、廃業した、と言う訳でないのなら、何かあまり宜しくない理由が有りそうで――
最初の理由だけで終わらせて置けば良い……それだけでも十分説得力があるのに、思わず余計な事まで口にして仕舞う俺。確かに一般人なら普通はこれで待ったを掛ける事が出来ただろう。
しかし、相手は――
「そう言えば妙な話よね」
「未だ、あたしが付いて来た事を怒っているのでしょう?」
再び現実の時間。十二月二十日の午後。目的地に向かう電車の中。
成るほど。朝の段階では、
「みんな、これから不思議に満ちた旅が始まるのよ!」
……などと言いながら拳を振り上げ、朝早くに偶然、西宮駅に居た人たちの注目を浴びて居た彼女が、その内に妙にテンションが下がって静かになって行った理由がようやく分かりましたよ。
しかし、柄にもなく、くだらない事に……。いや、本来の彼女はこう言う人物。物の道理を弁えた理性的な人間の可能性の方が高いか。
それならば――
「何を訳の分からん事を……」
口調は少し呆れた、と言う口調で答える俺。そして、
「確かに今回の弓月さんの依頼に危険な部分はあると思う。せやけど、危険があると分かった上で、それでもハルヒ自身が付いて来る事を決めたのなら、その意志は尊重するさ」
もっとも、オマエの事は俺が必ず守ってやる、……と言えたら良いんやけどな。
最後はかなり冗談めかした口調で閉める俺。但し、最後の言葉はホンネ。残念ながら、今の俺の実力では、必ず守ってやる、などと言う出来もしない約束など出来る訳がない。
尚、今回の弓月さんの招待に応じたのは俺と有希、それに万結の水晶宮関係者。それに術者としても一流の相馬さつき。当然のように招いた本人の弓月桜。
最後は一般人の涼宮ハルヒ、と言う一行。朝倉さんと朝
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