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どうやら俺は主人公を殺したらしい
四話、僕のもう一つの聖剣。
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が問われるかは、そのパワーがあるごとにハードルが上がってしまうのだ。それは僕がこの世界に生きていく中で嫌という程学んできたことである。

 ただ例外がある奴はいる。
 そいつは勿論、兵藤一誠である。書物でしか見たことない、まだ見ぬ架空の人物であるが、彼は本当の意味で戦闘に関しては素人、そしてスペック自体もセイクリッド・ギアというものを抜けば、下級悪魔クラスの平均よりもおそらく底辺に位置する。
 ………にも関わらずに、だ。
 普通に戦ってるじゃんか。しかも名前とか顔なんか忘れたけど、どっかのライバルさんが互角とか言われてたし。そのライバルとか、ほかの奴らは、何百年も生きているはずなのに。いや、悪魔の寿命なら千歳はくだらないかも。
 まあ、主人公の周りは、『兵藤一誠』という対象をなぜか持ち上げようとするから、実際はどうなのかは知らないけど。
 あと、兵藤一誠本人は努力とか言ってはいたが、たかが、一週間そこらで努力とか言われたら、何年間も血反吐を吐きつつ、体を弄られながらも、僕が決死に頑張っていた、あの努力は一体なんなのか。僕だけじゃない。僕の周りにはきっと僕以上に努力している奴だっている。悪魔らの場合は、血筋など純潔でスペックがあっても、その大半が貴族であるがために、修行とかあんましてないし。あいつら性格悪いから。あとは、政治絡みとか忙しい影響で、強いものであるほど、そっちに回されるから。
 ―――などと、回りくどい言い方だけど、何が言いたいかといえば、『兵藤一誠』というキャクターは悪い意味で例外である。

 今更ながら笑っちゃう。
 まあ、そこらへんが、主人公補正である御都合主義というものゆえなのか知らないけどさ。まあ、あれだよ―――

『あっああっ……デクタ様は今日もアスカロンを調教するおつも―――』

 しまう。
 反射的に深い思考から、現実に呼び覚まされる。それも最悪の形で。
 閉まっていたはずの聖剣アスカロンを鞘にカスン、と再び閉まう。なんか閉まった後に『っん』なんて聞こえたけど気にしない、気にしたら負けだ。
 僕はいつもの幻聴から意識を逸らすために、クリスチャンの背後から何気なく、声をかける。

「そろそろ着きそうですね」
「ええ、そうですね。……森に入ります」

 クリスチャンの彼女は淡々と言いつつ、人々で賑わっていた町並みから、森へ入った途端、人目がなくなったせいか走るペースを、ぐんと上げる。僕もあとに続くわけだが、

「―――ちょっと待ってください」

 走るペースを上げてから10分弱だった頃だろうか。僕の前を走っていた彼女がいきなり立ち止まり、振り返ったのちに僕に言った。

「私はこの辺で………」

 僕はなんとなく察した。
 彼女の案内としての役目はここまでだということを。

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