クロスツェルの受難 A
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の担当神父は外れくじの扱いを受け、強制派遣で一定数は保っているものの、その数は年々減少しているらしい。
それは旅を通して直に見てきたから間違いない。
この辺りも、ベゼドラが皮肉に語っていた利己精神に繋がるのだろうか。
入り口正面奥の礼拝堂に向かって並ぶ百人超えの列を避け。
その両脇に構えた二階への階段を、右側から上がっていく。
行列ができるほど人がたくさん集まっても話し声が聞こえてこないのは、それだけ彼らが熱心な信者だからか。
自分も、以前はあの中に居た筈なのに。
ロザリアを知ってしまった今、気分は複雑だ。
階段を上りきった先には、一階の礼拝堂と同じ面積の空間があり。
木製の長椅子が六脚と、丈高の装飾台が四つ、その上に色鮮やかな花々を活けた陶製の花瓶を置いて、見る者の目と心を和ませている。
そこを左目に捉えつつ右へ曲がり。
複数の大きなガラス窓が光を注ぐ直線の廊下を進む。
右手側にいくつもの扉を通り過ぎ、突き当たり正面。
両脇に床置き型の燭台が立つ焦げ茶色の扉を、コンコンと軽く叩く。
「はーい、どうぞー」
おや、珍しい。
すぐに応答するとは。
「失礼します」
「…………え!? うそ! まさか、クロちゃん!?」
扉を開いて、中を確認すると。
バルコニーを背負って机と睨み合っていた金髪藍目の女性が。
華やかな顔をパッと持ち上げて、椅子から勢いよく立ち上がった。
聖職者が口紅を塗るなというのに、この女性は……。
いえ、今はもう、自由で良いと思いますけどね。
「今までどこを歩き回ってたのよ、クロちゃん! 貴方、担当の信徒達から物凄く心配されてたわよ!? 余計な事務仕事を無駄に増やさないで頂戴! 腹立つわね!」
肩を露出し膝上で切り揃えた元長衣の裾を蹴って近寄らないでください。
しかも、また裸足ですか。
貴女、本当に聖職者としての自覚……
ツッコミを入れたって、仕方ないんですけども。
「すみません、プリシラ。多大なる事情があって、断りを入れる余裕すらも一切無かったのです」
この女性に過小表現は禁物だ。
ならば! と、何を言われるか分かったものではない。
「ええ、もちろんそうでしょうね。貴方ほどアリア様に心酔していた神父は他に居なかったもの。それを放り出す事情って何? 事と次第によっては、査問委員会が動くわよ」
「異端審問官ではなく?」
「数年前の会議で東区への赴任を希望しなければ、今ここに座っているのは貴方だったのよ? 気遣いとか、いろいろ察しなさい」
ああ、知らぬ間に借りを作ってしまったのか。
空恐ろしい。
「ありがとうございます、プリシラ。正直にお話
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