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逆さの砂時計
クロスツェルの受難 A
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て跳んでいた時とは、感覚が全然違う。
 解放感というか、爽快感というか、とにかく気持ちが良い。
 これを好きに体感できる悪魔がうらやまし……

「……ふふ。私も相当、壊れてきましたかね?」

 最近は誰かをうらやむばかり。
 うらやましいだなんて、以前はそんなこと、思ってもいなかったのに。
 ロザリアと出会ってからは欲が深くなる一方だ。
 神父だった頃の自分が今の自分を見ていたら、きっと、「汚らわしい」の一言に尽きるだろう……なんて、こんな考え方自体が滑稽か。

「過去を思っても、変えられるものではありませんし、ね」

 無駄な思考力は、貴女を取り戻す為に使うとしましょう。
 差し当たって、
 自分の胃を労りつつ、友人の機嫌を取る為には、どうしたらいいのか?
 とかかな。



 王都は、この国のちょうど真ん中。
 中央区北寄りの高い山頂に、純白の石壁が目映い王城を見上げ。
 南へ向かうなだらかな下り地形の上に、巨大な都市を抱えている。

 王城に合わせてか、市街地の建物はすべて白い石壁。
 屋根の瓦も、晴れ渡る空に溶け込む青色で統一。
 健康的な歯列を連想させる美しい景観は、他領の民からも他国の民からも手放しで賞賛されているらしい。

 この国のアリア信仰の本山である中央教会は、その美しい都のほぼ中心で二本の尖塔を高々と掲げ、白壁に刻まれた精緻な彫刻と無数のガラス窓で、眩しい陽光を弾きながら凛と佇んでいた。

 敷地境を示す鉄柵のアーチ部分を潜り抜け。
 正面にまっすぐ伸びる石畳を歩いていく。
 その幅は、大の大人が横一列で三十人以上並べるほどもある。
 両脇には芝生や低木、背高な常緑樹が左右対象に植えられていて。
 波打つ木漏れ陽や葉ずれの音が、来訪者達を快く歓迎する。

 教会本体に向かって前へと進めば、行く手をさえぎる噴水がお出迎え。
 歩き疲れた訪問者の為に、鉄製の長椅子も数台設置されているが。
 自分が目指しているのは、それを少し迂回した先。
 手すり付きの低い階段を五段上がって見上げる、噴水の高さよりも大きく立派な三つの玄関扉だ。
 ここは、信徒が出入りする時間帯だけ全開になっていて。
 アリア信徒以外にも自由な見学が許されている。

「……相変わらず、人が多いんですね」

 都民が活発に動き出す時間には少し早いくらいなのに。
 一歩踏み込んだ教会の内部では、既に礼拝客達が長い列を作っていた。

 アリア信仰そのものは、他の宗教団体と比べてもまだ大きいほうだ。
 ただ、人は人が多い場所に集まる傾向があるらしい。
 地元が(さび)れる気配を察した若い信徒達は、何故か都へと移住したがり。
 中央教会での立身出世を良しとする。
 結果、地方教会
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