クロスツェルの受難 A
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すよ。もちろん、盗みにはお説教を倍で追加しますからね」
「チッ。人間ってヤツはどうしてそう、住処を分けてくだらん手順や手間を増やしたがるんだ。一ヶ所にまとまって同じ金を使ってりゃ良いだろうが。陸続きで勝手に線引きして陣争いとか、お前らいったい何様のつもりだ? 人間の増長っぷりには、愉快を通り越して呆れを覚えるぞ」
その人間の生活にどっぷり浸かっている悪魔に言われても。
しかも怒りの論点はおそらく『面倒くさいことをしないとサンドイッチが食べられないから面倒くさい』……なのだろう。
最近のベゼドラは、一層分かりやすく我がままな気がする。
「とにかく、この旅を人間に邪魔させない為にも国を渡る許可だけは絶対に取得する必要があります。国内で進展がなければいずれは通る道でしたし、多少の手間は仕方ないです。リースは、もう少し頑張っていられますか?」
羽を背中に下ろして自分の手のひらに座る精霊さんは、軽く頷いた。
「朝露があれば大丈夫。これまでもそれでなんとか保ってきたから。でも、人間の時間で半月くらいが限度だと思う」
精霊と人間とでは時間感覚が違うのかな。
半月、か。余裕は無さそうだ。
「あまり会いたくはないのですが……やはり、そうも言ってられませんか」
今度は何を要求されるのか。
考えるだけでも背筋が凍りつきそうだ。
「リースは私のコートの内ポケットに入ってください。風圧が凄まじいので潰されたり飛ばされたりしないように気を付けて」
「風圧? ……うん、わかった」
右手を左胸に近付けて、リースがコートの内側に入ったことを確認する。
ポケットから顔だけをひょこっと出し、大丈夫と頷いて合図してくれた。
「ベゼドラ。まずは王都の中央教会へ向かいます。教会には私とリースとで行きますので、貴方は念の為、王都内部でアリアに関連する情報が出回っていないかどうかを探ってください」
「王都?」
「中央教会に私の友人が居るんです。各方面に顔が広い方なので渡国申請の協力をお願いしてみようかと」
「ふーん」
大して興味なさそうに、あっち? と、南東の方角を指すベゼドラ。
自分がそうですと答えると、彼は地面を蹴って空高く舞い上がった。
……人目につかないよう、周囲に気を配ってから跳ばないと。
これはこれで、不審者として国軍の方々に追われそうだ。
「行きます」
リースに聞こえる声で宣言してから、地面を蹴って跳び上がる。
ぶわっと襲ってくる風に、髪とコートの裾をバタバタと揺らされながら。
数秒の空中浮遊を経て地面に吸い寄せられ、踵でストンと着地。
足先を倒した勢いで、また雲より少し低いくらいの高さへと跳ぶ。
ベゼドラの背中にしがみつい
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