13部分:第十三章
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第十三章
そしてだ。夫人の再度の問いを受けるのであった。
「では今はどちらを」
「甘いものを。そして」
「そして」
「女性を。そういうことよ」
「わかりました。では」
「後でね」
またこの言葉を繰り返してであった。二人はデザートのティラミスを食べてそのうえで店を出てホテルに向かった。見事なホテルのスイートルームに入った。沙耶香はその部屋の中で彼女の熟れた肉体を楽しむのだった。
それが少し終わってからだ。沙耶香はその口に煙草を咥えながら自分の横に寝ている夫人を見てだ。そのうえで声をかけたのであった。
今二人はベッドの中に入っている。白い裸身の肩だけがそれぞれ見える。その白いシーツの中で身体を寄り添わせ合ってだ。そのうえでの言葉だった。
「久し振りだったけれど」
「どうでした?」
「よかったわ」
満足した言葉を彼女にかけたのであった。煙草はその口にある。先から嗚青い煙がたゆらぎそのうえで。倉病の部屋の中を漂っていた。
そして相手の言葉を聞いたのである。それは満足したものであった。
「やはり。女の人は」
「そうね。女の本当の悦びは女だけが知るものだから」
「そうですね、それは」
「そうよ。それにしても」
「まだ何か」
「肌よ」
今度は肌の話をするのであった。
「貴女の肌は前にもまして瑞々しかったわ」
「そんな筈がありません」
夫人はそのことはすぐに否定した。否定するその顔が暗闇の中で少し赤くなっていた。その顔もまた沙耶香に見られていた。
「私は。もう」
「いえ、本当よ」
「まさか。そんな」
「恋をしているからよ」
そしてこう言ってみせたのだった。
「貴女は恋をしている。だからその肌もね」
「瑞々しいというのですか」
「ええ。そしてその恋の対象は」
「貴女です」
沙耶香を指し示した言葉だった。指や腕でそうしているわけではない。言葉だけである。それで充分過ぎる程わかることであった。
「貴女にです」
「私に恋をなのね」
「主人は愛しています。けれど」
「けれどなのね」
「貴女は。それとはまた別に」
「いいのかしら。私は恋を向けられてもそれに応えることはしないわよ」
夫人に目を向けた。その目が妖しく笑いその笑みと同じ光を放っている。その光の中で言ってみせた、そうした言葉であった。
「それでもいいのかしら」
「はい、構いません」
それでいいと返した夫人だった。
「想いだけで。それだけで充分ですから」
「そうなのね」
「はい。ですからまた」
沙耶香に言ってきたのだった。
「御願いします」
「わかったわ」
沙耶香は微笑んだ。そうしてであった。
煙草を夫人に気付かれないように消してだ。そのうえで彼女に対して言ってみせた。
「今度は貴女が」
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