ある新米巡査の思い出
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はたしかその時だったかな?
その後、警視庁に戻り、今はICPOという訳だ」
銭形警部の軽い経歴を聞いた新米巡査がびっくりする。
思った以上に偉い人だという事に、警察官になったからこそ気づけたのだ。
「準キャリアじゃないですか!
そんな人が何で警部なんてやってんですか?」
警察官のほとんどは地方公務員であり、そのほとんどが人事異動や事件で県を跨がない。
跨ぐ連中は国家公務員のキャリア組かそれに準する準キャリア組である。
で、この国のキャリアの本流は東大法学部卒であり、銭形警部はそこの卒業ではない出向組。
つまり準キャリア組と分かるわけだ。
新米巡査の悲鳴に近い質問に、相手は軽く指を一本立てて答える。
「ルパン逮捕に専念して出世を棒に振ったというのが建前」
「本音は?」
「切れすぎたのさ。
考えても見ろ。
ルパン三世が狙った連中を。
カリオストロ伯爵をはじめ、富豪、政治家、国家機関と叩けば埃が出る所ばかりだ。
歩くパンドラの箱だよ」
カリオストロ公国の例を見れば分かる通り、ルパンと関わる形ではるかにそれ以上の深い暗部を見続けたのが銭形警部である。
無茶ができるのもその暗部を見続けたからというのが間違いなくあるだろう。
「とはいえ、いつまでも居るわけには行かないでしょうに」
「だから、こっちに戻っている時に仕事しているだろう?
現場でまだやれるとアピールしながら、帰るのを拒んでいるのさ。
帰ったら警視昇進が確定でどこかの警察署長。
で、翌年に警視正で本部長って所だろうに。なんで断るのやら……」
最近はルパンを使った別事件が発生することがあり、それで彼が呼ばれることがあるのだが、そのほとんどがルパンに無関係である事が発覚している。
それも銭形警部が事件を見事に解決してしまったからに他ならない。
新米警官がなんとなしに冗談を言う。
「それこそルパン逮捕の為では?」
その冗談が面白かったのか、笑うが声は出ない。
代わりに、彼は楽しそうな顔でこんな事を言う。
「だから、搦手で組織をいじったらしいぞ。
管理官制度。
あれ、何かに似ていると思わないか?」
「!?」
「そう。
ルパン逮捕の為に派手にに動きまわって、あちこちに迷惑をかけたあの人の教訓として生まれたのがあれさ。
複数の捜査本部を統括できるから、あれを使えばルパン逮捕は飛躍的に楽になる。
だから、つきませんかと説得中」
卵か先か、鶏が先か。
どっちが先なのかは知らないが、そこに鶏がいて卵が生まれるのならば人は利用するのである。
管理官制度は平成に入って確実に成果を上げつつある制度になっていた。
話し疲れたのか
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