巻ノ九 筧十蔵その七
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「都じゃな」
「殿、都はいいですぞ」
清海は幸村に明るい笑顔で言った。
「賑やかで色々な者や店があり」
「長い間荒れておったというが」
「もうそれは昔のことで」
今の都はというのだ。
「相当に賑やかになっています」
「そうか、ではな」
「都に行けばです」
そこで、というのだ。
「色々なものを楽しめますぞ」
「ふむ、都を見るのもだ」
生真面目な幸村は清海の笑っての言葉に落ち着いた声で返した。
「見聞を広めることになる」
「いや、遊びませぬか」
「遊ぶことも悪くはない」
それもというのだ。
「人は色々なことを知ってこそ深みが出るというからな」
「いや、学ぶ為に遊ばれますか」
「駄目か」
「遊ぶ為に遊ばれるのではないのですか」
清海はいささか面食らって幸村に問い返した。
「学ぶ為に遊ばれるのですか」
「駄目か」
「いや、言われてみれば殿らしいですが」
それでもとだ、清海はその幸村に面食らった顔のまま言葉を返した。
「そうした遊び方もありますか」
「拙者は全てのものが人を深めると思っておる」
「遊びもですか」
「うむ、そう思うがどうだ」
「確かに。遊びから得られるものも多いですが」
清海は歩きつつその丸太の様な腕を組んで幸村に応えた。
「しかし。遊びもまた学問とは」
「学問も楽しいと思えば遊びではないのか」
筧がその清海に問うた。
「それがしはそう思うが」
「では御主はいつも書を読み術を学んで遊んでおるのか」
「楽しむことを遊びとするならばな」
「そうなるのかのう」
「では拙僧も修行が遊びでしょうか」
無類の修行好きの伊佐も話に入って来た。
「そちらも」
「何でも遊びになろう」
幸村はその伊佐にも答えた。
「術を学ぶことも修行もな」
「そうなりますか」
「しかし遊びは一つではなかろう」
幸村は家臣達にこうも言った。
「清海の好きな酒におなごに博打もじゃ」
「そういったものもですか」
「遊びであろう、遊びも色々とやってみて知ることじゃ」
「では相撲もしてですな」
相撲好きの望月も出て来た。
「そして他の遊びも」
「すべきであろうな、人として深くなる為にはな」
「ううむ、殿の仰ることは深いですな」
海野は幸村の言葉をここまで聞いて清海がそうしている様に腕を組んで考える顔になって言った。それも真剣に。
「遊びも学ぶことでしかも多くすべき」
「そう思う、だが溺れてはならぬであろう」
「遊びには」
「溺れてはそのまま死んでしまう」
水に溺れるのと同じでというのだ。
「それはよくない」
「ですな、酒と博打で滅んだ者は多いです」
穴山が頷いたのは幸村のその言葉に対してだった。
「溺れればですな」
「そうなりかねぬ
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