3-2話
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突然、怪鳥《チョコボ》の体が跳ねるように片足を暴れさせた。
まただ…同じような動きを、この怪鳥《チョコボ》は痛がっているような仕草をさせた。
不意に、這い蹲っていたオレの傍にピンポン玉くらいの大きさの石ころが落ちた。
まさか………まさか、とオレは想像を膨らませた。
この石で……この怪鳥《チョコボ》にぶつけたのか?と、そんな仮定が浮かんできた。
まさか、と再びと自問する。
―――キンッ!!
カカァアア―――!!
「(…!! 間違い、ない!)」
一瞬だった。
一瞬だったが……怪鳥《チョコボ》の後頭部に、鋭く飛来して何かがぶつかった。
弾丸のように飛んだソレは、怪鳥《チョコボ》に苦悶の声らしき怪音を上げさせ、そして地面に落ちた。
それはやはり…ピンポン玉サイズくらいの石つぶてだった。
クアァアッ―――!!
これに怪鳥《チョコボ》は怒りを露にし、オレ達から意識を逸らして背後――森の方向――へと振り返った。
ドスン、ドスン…と不器用な動きで反転する怪鳥《チョコボ》。
だが……その鈍重な動きに、今度は必殺の一撃が飛んだ。
ァオォォン―――!
亜音が鳴った。
笛を鳴らしたかのような風切り音が森の中から飛来し、太陽に照らされて銀光が閃いたのを見た。
ブジュ―――。
肉を切るような、あるいは潰すような不快な音。
亜音は怪鳥《チョコボ》を過ぎ去って、耳朶《じだ》を鈍く響かせる。
次の瞬間…怪鳥《チョコボ》の片目に鮮血《ち》が飛び散った。
「なっ…!?」
「ひっ…!」
■■■■ァァァッッ―――!!!
怪鳥《チョコボ》は絶叫のような恐ろしい声を上げた。
その片目には綺麗な一筋の赤い線がはしっており、それが斬り傷なのだと判った。
オレ達の目の前で…こいつは片目を容赦なく奪われた。
“手”というモノがない怪鳥《チョコボ》は傷ついた目をどうする事も出来ず、首を左右に振り回して…逃げるようにその場から立ち去っていった。
土煙を上げ、草原を荒々しく駆けていくその後ろ姿を、オレ達は呆然と見ているしかなかった。
怪物を遠くなっていて、全身の力が抜けていくような感が満ちた。
「は…っ、は……ははっ……はぁ…!」
肺の中の空気を絞り出す空笑いが出てきた。
鳴り止まない胸の動悸で、自分がどれだけ極度の緊張感を強いられたのかがわかる。
ただ、これだけはわかる。
助かった…という実感。
息を吸う事すらこの上なくありがたく思えるほど…絶望から逃れた喜びが大きかった。
それは真理谷もCAも同じだった。
「た…助かった……」
ホ〜…
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