3-2話
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原始的な危機感を覚え、オレは目を瞑って体が強ばった。
―――キンッ!
強烈な威力が手元を通り過ぎていき、チュンッ…とシャッター音と一緒に携帯電話が粉砕されたのは同時だった。
切り裂くような風切り音を立て、プラスチック素材が飴細工のようにバラバラになって四散《しさん》した。
狙いが逸れた?
外れた?
運が良かった?
どちらにしても、あのまま真っ直ぐ顔に向かっていたら…と、嫌な想像に冷や汗が流れる。
そうなれば間違いなく、携帯電話の代わりにオレは絶命していただろう。
―――ゲエェェアァ!!!
怪鳥《チョコボ》は片足をバタつかせて暴れ始める。
まるで痛がっているような仕草だが、こんな至近距離でそれをされたら巻き込まれそうな暴れっぷりで、危なくて仕方なかった。
「な……ぁ……う、わ、わああぁ……!」
理解が追いつくと、心臓が跳ねるように激しくなったきた。
トラックが猛スピードで目の前に通り過ぎた以上のような恐怖を、今更になって実感する。
とてつもなく恐ろしい存在だと思い知らされたその怪鳥《チョコボ》から少しでも離れようとする…が、足腰が砕けたのか思うように立ち上がらず、もがくようにみっともなく四つん這いに這って逃げようとした。
「せ…ん……仙…石……」
ふと、こんな状況の中で誰かに名前を呼ばれた。
振り向けば…そこには人がいた。
それも…オレの知る顔だった。
「ま…真理谷《まりや》!?」
怪鳥《チョコボ》に目を奪われて気付かなかったが、草むらの上で同級生が横倒れになっていた。
オレよりもチビで、メガネの向こうの目付きが冷たくて、マリヤなどという男の名前っぽくない奴だが、今はそれすら懐かしい。
「手を…貸せ……足を、やられた…」
見れば、真理谷は足を抱えていた。
いつも肌身離さず持っているノートパソコンを投げ出している辺りそれだけ痛むのだろうか、顔には苦悶《くもん》が浮かんでいた。
「お前も無事だったのか…!」
「シッ…! もう一人、いる……」
「もう一人?」
「きゃあああ〜〜〜!!」
切羽詰っていながら、どこか間延びした悲鳴を聞こえた。
悲鳴は怪鳥《チョコボ》の方からしていて、オレは真理谷に肩を貸しながらそっちに振り返った。
すると、そこには…木の枝などで寄り合わせた巣らしき所に、怪鳥《チョコボ》に振り回されている女性がいた。
嘴《くちばし》に咥えられ、まるで体力や気力を奪うように振り回す。
女性は髪と悲鳴を振りまきながら、怪鳥《チョコボ》にいいようにされている。
あの制服、見覚えがあった。
旅客機の…乗組員のCA《キャビンアテンダント》か?
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