第九幕その九
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「どんな木の破片や石の上を進んだり触っても痛くないから」
「だからですね」
「刺が刺さったこともね」
それこそというのです。
「はじめてだったし」
「それで、ですね」
「うん、驚いてもいたんだ」
「けれどです」
「酷い刺、そして刺さり方が悪いと」
「刺さるんですよ」
「僕でもだね」
熊もしみじみとして言うのでした。
「刺さるなね」
「そうなんです」
「絶対ってないんだね」
熊はこのことも知ったのでした。
「そうなんだね」
「そうです、何でもです」
「絶対というものはなくて」
「熊さんでもです」
「こうしたことがあるんだね」
「そうなります」
「そのこともわかったよ」
また言った熊でした。
「本当にね」
「絶対のことはない」
カエルマンは少ししみじみとした口調になっていました。
「僕もわかっておかないと」
「駄目ですか」
「そう思うよ、井の中の蛙だとね」
かつての自分のことも思うのでした。
「そうしたこともわからないね」
「そういうことなんですね」
「全く以てね。さて」
ここでこうも言ったカエルマンでした。
「後はね」
「後は?」
「うん、熊君のことも終わって」
「ここを通られますね」
「これでね」
「僕達迷路を出られますね」
「そして青龍のところに行けるよ」
目的地にさらに近付けるというのです。
「迷路を抜けて」
「そうなりますね」
「ああ、僕はこれでね」
熊も皆に言いました。
「自分の巣に帰るよ」
「そういえばどうしてここにいたのかな」
出口のところにとです、神宝は熊に尋ねました。
「その理由は」
「あっ、それはね」
「それは?」
「たまたまだったんだ」
「たまたま?」
「ここに茸があったからね」
熊は自分の足元も見ました、今は茸は一つもありません・
「僕茸が好きだから」
「食べる為にですね」
「ここにいたんだ」
こう神宝にお話するのでした。
「そうだったんだ」
「そうなんですね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「もうここには用はないよ」
「巣に帰られるんですか」
「それで寝るよ」
実に気持ちよくそしてのんびりとした言葉でした。
「これからね」
「わかりました、それじゃあ」
「またここに来たらね」
迷路の森にというのです。
「来てね」
「そうさせてもらいますね」
神宝も皆も熊ににこりと笑ってです。
別れの挨拶をしてお互いに手を触り合いました、そうしてなのでした。
一行は熊の姿が見えなくなってから森を出ました、その前には山が幾つも連なっていました。ケーキはその山を見て言いました。
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