第九幕その七
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「だからここはね」
「掌に蜂蜜を塗るんだね」
「そうするといいんだけれど」
それでもとです、カエルマンはここでこうも言いました。
「君は蜂蜜が大好物だから」
「塗ったらね」
それこそとです、熊もカエルマンに答えます。
「すぐにだよ」
「その蜂蜜を舐めてしまうね」
「そうせずにいられないよ」
好きで仕方がないからです、蜂蜜を。
「もう見付けたらね」
「だからね」
「蜂蜜を塗っても」
すぐに舐めるからだというのです。
「棘は抜けられないよ」
「どうすればいいのかな」
「ううん、このことは」
「ここはどうしたらいいかな」
「ああ、それならだよ」
魔法使いがです、熊に言ってきました。
「いい薬があるよ」
「あっ、魔法使いさん」
「僕の鞄の中にね」
それがあると言ってです、そして。
ある丸い箱を出しました、それを熊に見せてです。
そのうえで、です。熊に対して言いました。
「この軟膏薬を君の掌に塗ればね」
「棘が出るんだ」
「そして棘が刺さっていた傷もね」
それもというのです。
「治るよ」
「そうしたお薬なんだ」
「刺はすぐに出るよ」
もう今すぐにというのです。
「簡単にね」
「蜂蜜よりも?」
「蜂蜜を塗ってもね」
「抜けるまでには時間があるから」
「君も舐めてしまうしね」
このことも言う魔法使いでした。
「けれどね」
「そのお薬ならですね」
「塗ってもね」
それでもというのです。
「舐めないし」
「それに刺もすぐに出て」
「傷も治るからね」
「蜂蜜を塗るよりもね」
「ずっといいんだね」
「そうだよ」
まさにその通りだというのです。
「だから塗っていいかな」
「是非頼むよ」
熊は魔法使いにとても切実なお顔でお願いしました。
「この刺が抜けるのならね」
「うん、刺さったままさとよくないしね」
「気になるし痛いし」
「それに刺さったままだとそこから雑菌も入ってね」
そうしてというのです。
「怪我が悪くなったりするから」
「今のうちにだね」
「抜いておこう、しかも君が不機嫌なままだと」
「森の皆もだね」
「そう、怖がっているから」
「怖がらせているつもりはないけれどね」
熊にしてもです、そのつもりはありません。
ですがそれでもです、不機嫌なままなので。
「不機嫌なままなのも確かだからね」
「そこも何とかしないといけないから」
「だからだね」
「今すぐ抜こう」
「わかったよ」
こうしてでした、魔法使いは熊のその右の前足の掌に軟膏薬を塗りました。すると。
刺が抜けてでした、そして怪我も治ってです。
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