三十話:想いと日常
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淑やかな女性の象徴でもあるシスターや清貧な信者たちが往来する中に俺は立っていた。
ここは聖王教会本部。ヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんの試合会場だ。
一端、ここでヴィクターとジークと合流する予定だ。
今日ジークと一緒でない理由は昨日の帰り道にヴィクターがジークを攫ったからである。
何でも娘が迷子になったことで母性本能が暴走したらしい。
その様は凄まじかったとだけ言っておく。
「あー、なんであたしがお嬢様の出迎えなんか……」
隣でブツブツと文句を言っているのはシャンテちゃん。
茶色の髪に紫の瞳をしたシスターだ。
因みに言葉から分かるようにちょっぴり不真面目だ。
「道さえ教えてくれればこっちとしては、問題無いんだが」
「こっちとしてもその方が楽でいいんだけどね。これサボるとシスターシャッハに拳骨落とされちゃうんだよ」
「……意外と体育会系なんだな」
もう少しお淑やかだと思っていたが現実は違うらしい。
「というかお兄さんは二人とどんな関係なのさ?」
「実は……アインハルトとは生き別れた兄妹なんだ」
「うそッ!?」
「ああ、嘘だ」
「うっ! 騙したな!」
カラカラと笑う俺に猫のように威嚇してくるシャンテちゃん。
だが決して手を出さないあたり流石はシスターといったところだろう。
後、意外と純粋な心の持ち主らしい。
「と、暇をつぶしている間に待ち人が」
「あたしの話を聞けー!」
横で顔をしかめて可愛らしく怒っているシャンテちゃんをスルーしつつ目立つ二人組に目を向ける。
きょろきょろと子どものようにあたりを見まわしているジーク。
一歩後ろからそんなジークを微笑まし気に見つめるヴィクター。
どこからどう見ても母娘にしか見えない。
「こっちだ。ジーク、ヴィクター」
「あ、リヒター!」
「リヒターですか……チッ」
「ちょっと待て、今舌打ちしただろ。母娘の時間を邪魔されて舌打ちしただろ」
「何を言っているのですか。ダールグリュンが舌打ちするわけないでしょう」
シレッとした表情で先程の件をなかったことにするヴィクター。
無邪気に手を振っているジークとの対比でことさら黒く見える。
だが、時は俺達を待ってくれない。
何やらヴィクターにツンツンしているシャンテちゃんの引率の元、今日の主役の元に向かう。
「なぁ、観客は私らだけなん?」
「んにゃ。他にもいっぱいいるよ。例えばほら、すぐそこに」
シャンテちゃんが指差した廊下の向かい側には魔女っ娘ことファビアちゃんがいた。
それと、と言っては失礼だがルーテシアちゃんに水色の髪のシスターさん。
合わせて三名が俺達と同
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