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逆さの砂時計
遭遇
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もくっきりとした輪郭を与え。
 靴や車輪や馬蹄などで踏みならされた地面を白く照らしてくれている。
 おかげで深い森の中でも足を滑らせる心配はないし、これだけ人の痕跡がはっきり残っているのなら、次の居住地まではそれほど遠くないだろうと、見当をつけていたのだけど。

「人間嫌いなのに、こんな所まで来て大丈夫でしょうか、精霊さん。何か、癒しになる物があれば良いのですが」
「さあな」

 ここに来るまでの間にも、悪魔絡みの騒動は数件あった。
 どれも悪魔憑きが起こしたものだったが。
 ベゼドラの力で関係者を巧みに誘導すれば解決できてしまう程度。
 現代のアリアが特別に関わっていた形跡もなく。
 ルグレットさんの件以降、めぼしい情報は手に入らない。
 西区で新しい展開があればと思っていたところへの、彼女(精霊)の登場だった。

「ベゼドラ……悪魔絡み以外でも神代の関係は手掛かりになるということ、忘れてはいませんよね?」
「当たり前だ。お前のほうこそ忘れてんじゃねえか? 俺らが知りたいのはアリアの過去じゃねえ。現在地だ。ソイツを助けても知ってるとは思えん」
「尋いてみなければ分からないでしょう?」
「あのなあ……」

 ベゼドラが呆れたため息を吐いて足を止め。
 ジトっとした目で自分を睨みつける。

「言ったろ。ソイツは死にかけてんだって」
「ええ」
「アリアは現代(いま)も、困窮してるヤツには間接的でも手を借したがるバカだ。そんなアイツが近くに居るとして、ソイツを放置すると思うか?」
「しないでしょうね」
「だろ? つまりソイツは、現在のアリアに直接繋がる情報は持ってない。ハズレだ。無関係なところに無駄な手間を掛けるな」
「ですが、相手は空間を一瞬で飛び越える力の持ち主。どこで何が繋がるか分からないのも事実でしょう? 手掛かりの幅を狭めてしまうような選択は得策ではありません」

 遠回りは覚悟の上だ。
 拾えるものは、可能な限りすべて拾っておかないと。
 本当に大切な情報まで見逃しかねない。
 自分達は、アリアについての真実を、ほとんど知らないのだから。

 ベゼドラは不満そうに腕を組んで。
 また、ため息を吐いた。

「朝露」
「?」
「精霊の力の源は、朝陽を浴びた葉に溜まる水滴だ。零れ落ちる瞬間の露を飲ませれば、多少はマシになるかもな」
「朝露、ですか」

 見上げた空は、まだまだ黒い。
 夜が明けるまでには当分掛かりそうだが。

「でしたら、歩きながら日の出を待ちましょう。森はまだ続いてますし」

 ガリガリと苛立たしげに頭を掻くベゼドラを置いて、先へ進む。

 焦っても仕方ないんですよ、ベゼドラ。
 世界規模で時間を止めても、アリアの姿が見えていなければ意味
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