本編
第三話
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女が何の用があって主人に会うのかは分からないが流石に主に不敬な態度をとってしまえばどのような処罰が下るか分からないからであった。
「はい、ただいまの時間は執務の真っ最中であります。しかしお嬢様のご帰還にそのような些末事は気にすることはありません」
本来はヴァリエール家程の貴族の仕事は些末な事と言えるようなものでは無いが、ルイズの帰還はそれ以上のものだと執事長は確信を持っていた。
「それではどうぞ、お入り下さい」
一般的なマナーとしてはここでは使用人が扉を開け中の人物に来客の旨を伝えるものであり貴族であるルイズに扉を開けさせるのは執事としては落第点もいいとこであろう。だが執事長はルイズ本人が扉を開けた方が良いサプライズになると考えての行動だった。
「……ごめんなさい、爺に開けてもらっていいかしら?」
「おや、それはまたどうして?」
「その、なんていうか……ちょっと気恥ずかしいから……」
ルイズとて一介の思春期の少女である。何年も会っていなかった父親に会いたい気持ちは勿論あったが、会った時にどんな顔していいのかとちょっぴり悩んでいた。
「そうですか、畏まりました。では暫しお待ちを」
執事長はその姿に微笑ましいものを感じ、無理に勧めることなくまず自らがノックをし、部屋の中へ入っていった。
「……」
暫くして、部屋の中が俄かに騒がしくなった。そして何かが倒れる音、おそらく勢いよく立ち上がった拍子に椅子が倒れた音、そのバタバタと扉の前まで迫ってくる気配。ルイズはおそらく飛び出てくるであろう父親に会う心の準備を整えた。
「ルイ「ルイズ!!」」
一瞬、扉が開き中に自分父親の姿と声を認識したルイズだったが、それは横から飛び出てきた烈風によって掻き消された。烈風は勢いをつけたままルイズに向かって来て、その勢いで開きかけた扉を閉じるとルイズに抱き着いてきた。
「一体、今までどこに行っていたのですか!」
ルイズに抱き着いた烈風は怒りに震えるようにそう言った。抱き着かれたルイズは身長の差もあってその顔を見ることが出来ないでいたが、その声と温もりを覚えていた。
「奥様、落ち着いて下さいませ。 そのように怒鳴られては……」
「黙りなさい、何年も家族を心配させていたのです。そんな娘を叱るのは当然です。さあルイズ顔を上げなさい」
その声に従い顔を上げたルイズの目には何年もずっと会いたくて会いたくてたまらなかった顔があった。ふいに声の主がルイズの頭の近くに手を持ってきたので、咄嗟にルイズは目を瞑った。
「あう……」
パチンと優しい音と共にルイズの額に軽い痛みが走った。声の主は親指に中指を引っ掛け、中指を前に勢いよく弾き、ルイズ
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