第三十二話
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やはり、その日も寄生根を発見することはできなかった。
昨日の衝撃は未だにクラスの生徒達に影を落としてはいたが、生徒達の間では事件性は低いらしいとの噂になっているらしい。たまたま運が悪かった二人が火災に巻き込まれて死亡したということで落ち着きそうだった。
ニュースも昨日火災について報道したものの、それは単なる火災によって生徒が死亡したと伝えたのみで、続報は一切なかった。
学校と警察の情報操作がうまくいっているってことなんだろうか。
警察が学校に残っているのは火災原因がはっきりしないということで念のために調べているらしい。
警察や先生に見つからないように気をつけて校内を捜索することは思った以上に辛い作業だった。そしてそれはすべて徒労に終わったことから、心底ぐったりとしてアパートに帰りつく。
王女には今日も成果が無かったことを伝えると、想定通りとでもいうように頷くだけだった。
時間だけが無為に流れていく気がした。でも何もないということは犠牲者は出ていないと言うことだから、それはそれで喜ばしいと言うことでもあるんだけど、何か落ち着かないいいようのない焦りが日々募っていく感じだった。
何か終わりへのカウントダウンがすでに始まっている、そんなとてつもなく厭な感覚があったんだ。
さすがにコンビニ弁当ばかり食わすわけにもいかないから、王女を連れて外食に行くことにしたんだ。……といってもファミレスに連れて行っただけなんだけどね。
王女の好みがよく分からないし、ファミレスでメニューを見て決めてもらった方がいいかなって思ったんだ。ずっと部屋の中に閉じこもりっきりだから、少しは気分転換にもなるかとも思ったんだ。
実際、久しぶりのお外なので、王女はいつもより少し、はしゃいでいた気がする。
ファミレスに入ると彼女はワイワイはしゃぎながらメニューを選び出した。
「何を頼んでも良いのか? お前、お金はあるのか? ドリンクバーって何だ? シュウは何を頼むの。何が人気なんだ」
「うん、好きな物を選んで良いよ。お金だって姫が頼む分なら全然大丈夫だから気にしなくていいよ。好きなだけ頼んで。それとドリンクバーはあそこのものが飲み放題だ。ここの一番人気はハンバーグだよ」
矢継ぎ早な質問に答える。
メニューを見ながらあれやこれやと話しかけてくる王女はとても楽しそうだ。それを見て俺も思わず微笑んでしまう。
ひとときの安らぎなんだろうか、これは。
結局、食べられない数の物を頼み、残した分は俺に押しつけて満足げにダージリンティーを飲む王女を俺は恨めしげに見つめている。
「残したらもったいないから、全部食べるのよ」と残すことは許されなかった。頼んだのは王女なのに。
完食はしたものの、お腹が破裂しそうなくらいぱんぱんに
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