第三十二話
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させられてしまった。
「うー気持ち悪い……」
会計をしながらも腹が痛かった。
「さあ、帰ろうか」
「ちょっとコンビニってところにも寄りたいんだけど……、あ、あそこだわ」
と王女は言うとさっさと歩き出す。
「ちょ、ちょっと待って……」
お腹を押さえ、猫背気味に彼女の後を追う。
唐突に携帯が鳴り出した。
ポケットから取り出しディスプレイを見る。
【漆多伊吹】
俺は一瞬固まってしまった。
どうして漆多から電話がかかってくるんだ?
すこし前ならごく当たり前のことが、今は凄く違和感を感じるし、電話に出るのが鬱陶しい、面倒くさく感じる。
……いや本当は怖いんだ。
「もしもし」
指が震える。声が震えるのが自分でも分かった。
何をそんなに緊張しているんだ。
少し離れて歩いていた王女が俺の異変に気付いたのか、慌てて戻ってきた。
「どうかしたのか、シュウ」
俺は彼女に静かにするように目で合図をした。彼女も俺の意図に気付いたのか、頷く。
「つきひと……、俺だよ。聞こえるか」
漆多の声だった。疲れ切った声だった。
「ああ、聞こえるよ。どうしたんだ」
何故今電話してきたのか、その意図が分からず、俺は探るような口調で話す。
「すまない……。ちょっとお前に話したいことがあるんだ。……今から逢えるかな」
「……電話じゃダメなのか? 」
「ああ、直接逢って話したい……、いや聞きたい事があるんだ。いいかな? 」
「今からなのか……」
と俺。
「……今からじゃダメか? 」
と返してくる漆多。
俺はとっさに断る理由が見つからない。
「それは、日向の事か」
俺はおそるおそる問う。
「……そうだ」
一呼吸置いて、漆多がはっきりと答えた。
「寧々のことでお前に聞きたいことがあるんだ」
ついにこのときが来てしまったのか。ずっとずっと避けてきた事。それがついに来てしまった。それでも俺は来るべきものがついに来たということである意味ほっとしていた。
「分かった。じゃあ今から会おう。どこに行けばいい? 」
俺の問いかけに漆多はある場所を告げ、唐突に切られた。
それは、俺がこの【通称】学園都市に来てから一度も行ったことの無い場所だった。
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