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【銀桜】8.破壊狂篇
第3話「少年は詩を奏で桜は音もなく散る」
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「あん?」
「『破壊』で『快楽』を得るなど――」
 バカバカしい。
 束の間の快楽は永遠の苦しみを味わうだけ。
 それが過去に過ちを犯した双葉の一つの答えだった。
 同時に、逃れようのない事実だと思っていた。
 しかし――
「それもいいじゃないか」
 しかし――それはこの少年の理念によって覆される。
 狂的な笑みで、しかしどこか澄ましたようにグラハムは言う。
「自分で言うのも何だが断言できる。オレの頭はおかしい。そう、オレは壊れてる」
 苦笑しつつもグラハムは恍惚とした表情でレンチを回転させる。
「だからこんなに楽しいんだろうな。壊れているからこそ、どうしようもなく狂った状況が当たり前だと楽しめる。壊れ方によっちゃ厭(いや)な事も苦しい事も悲しい事も、全て楽しむ事ができるだろう。際限なく自分の思うままに世界を楽しめるなんて、まさに夢のような幸せな話じゃないか」
――…………。
 なんて図々しい自分勝手な考えだろう。グラハムが言ってることはまさに『邪道』だ。
 外道を極めたあの鬼神(おに)が聞いたら何と笑うだろうか。
 しかし……双葉は何も言い返せなかった。
 それもそのはずだ。
 彼の言葉に、双葉は自分でも気づかないうちに納得していたのだから。

=つづく=

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