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【銀桜】8.破壊狂篇
第3話「少年は詩を奏で桜は音もなく散る」
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とを嘆くことは容易いが、オレは容易い男ではないのでこれ以上嘆かない。というわけでアレだ。オレの悲しい心を癒すために――

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 首を絞めたレンチがぐいっと引っ張られグラハムと双葉の唇が惹かれ合う。
 もうキスしてもおかしくないくらい互いの唇が重なりかかった。
 だが化け物のような笑顔が目の前に飛びこんできたことで双葉の意識は現実へ戻り、とっさにグラハムの喉を殴って強引な口づけを防いだ。
「ぐわはっ」
 痛みに吠えたためにグラハムの力が緩んだおかげで、レンチから解放された。双葉は続けて喉元を押さえる彼に容赦なく殴りかかる。
 だがグラハムはその動きを予想していたかのように、モンキーレンチを素早く器用に細い二の腕へ滑らせる。鉄パイプを握っていた双葉の右腕はモンキーレンチにすっぽりと挟まれてしまった。
 しかし右腕は(おとり)だった。
 挟まれた瞬間に鉄パイプを落とし、双葉は左手に持ち替えた。
 グラハムの武器は巨大なモンキーレンチただ一つ。
 唯一の工具は双葉の右腕を捕えているせいで固定されている。本人もそれを握っているがゆえに動きようがない。
 そして、双葉はグラハムの腹部めがけて殴りつけた。

“ガキン”

 火花が散った。
「言っただろ」
「!?」
「人生とは常に驚きと楽しさでできていると」
 それは金属同士が衝突して生まれた光。
 鉄パイプはいつの間にかグラハムの左手に握られた小型のレンチに受け止められていた。ニヤリと笑うグラハムの胸元には数本の小さな工具が収まった懐があった。
 武器は一つだけではなかった。
 驚愕する双葉を前に、グラハムは交差(クロス)する二つの腕に握られたうちの小型のレンチを半回転させ鉄パイプを遠くへ弾き飛ばす
 そして残りの獲物を捕えた巨大レンチを、さっきと同じように半回転させた。
――しまった…!
“グギッ”
 異様な音と共に激痛が走る。
 だが骨が折られたわけじゃない。だから双葉の右腕はありえないくらいにダレた。
 関節が外れた片腕は、もう使い物にならなくなった。
 神経や血管が千切れた痛みは尋常ではなく、悲鳴を上げたっておかしくない。
 だが双葉はそれを噛み殺して抗った。もうこれ以上こんな少年に負けないために。
 しかし状況は圧倒的に不利だ。左腕でも十分戦える自信があるが、戦おうにも跳ね飛んだ鉄パイプとの距離がありすぎて取りに行く余裕などない。それ以前に相手がそんな行動を許すはずがない
「くかぁ〜。気持ちいいな。女の関節を外したのは久しぶりだ」
 思考錯誤する双葉の隣でグラハムは実に満足そうに、それこそ幸せに満ちた笑顔で『快感』に浸っていた。
 そんな彼に、未だに激痛が走る肩をおさえながら双葉は蔑んで言う。
「くだらないな
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