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【銀桜】8.破壊狂篇
第3話「少年は詩を奏で桜は音もなく散る」
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は腕の立つ奴だ。多勢の敵を返り討ちにするだけの抜け目ない実力がある。
 力を持った相手にはそれ以上の力で攻めるしかない。
 双葉はモンキーレンチを宙に回すグラハムをもう一度鋭く睨む。
 そしてレンチがグラハムの手から離れた瞬間を合図に、鉄パイプを構えて走り出す。
 対するグラハムはレンチを振り上げ迎え撃つ――しかし視界から双葉が消えた。
 間近に迫ったその瞬間に、双葉がしゃがんで別の角度から攻め入ったせいだった。
「のわっ!」
 真っ向からの攻めと勘違いしたレンチは空振りし、足を蹴られて重心を失った身体はそのまま体勢を崩し大きく地面に倒れた。
 そして鉄パイプはグラハムめがけて振り下ろされ――
 
        屍と化した仲間達。
                       斬り裂かれた笑顔。
            深紅に染まった銀髪。
                           狂気に堕ちた女を抱く男。
 
 突然目の前に広がる記憶の光景。
 過去の衝動が押し寄せる。
――こんな…とき…に…
 双葉の動きがピタリと止まる。
「……たしは……わた…ただ…」
 うわ言を呟いて、弱々しくその場に座りこんでしまう。
 今までと全然違う、別人のように怯んでしまった双葉に眉をひそめるグラハム。
 だが彼はそれを突然訪れた幸運と受け取り、彼女を軸に円を描くように歩いて、また語り始める。
「これは神が与えたチャンスと言っていいのだろうか。待てよ待てよ、高杉のアニキに会えたり、運命の恋人と巡り合い、思う存分モノをブッ壊せるチャンスをたくさんもらえるオレって、もしかして神に愛されてる?うわぁヤベェよマジヤベェ。それがホントだったら超ヤベェ話だよ。いやいやいや、これは嬉しい話だろう。嬉しい嬉しい、なんて嬉しい話だ。オレの嬉しい話ベスト10に入るくらいだぞ。よし!この嬉しさを忘れないため今からオレの嬉しい話ベスト100を紹介していこう!!」
 相変わらずのハイテンションで語り紡がれるが、たった一人の観客は肩を震わすだけで耳を傾けてすらいない。
 ご機嫌だったグラハムの顔に一瞬だけ陰がよぎると、双葉はモンキーレンチの先端に生け捕りにされた。
「悲しい話第1位『無視』。こっちは胸が張り裂ける気持ちを声にして叫んでいるのに、それを在りもしないかのように聞かず答えないってこれほど悲しい話があるか!?そう、『無視』とは存在そのものを否定する人として最も残酷な行為だ。だから人の話はちゃんと聞かないとな。無視されるのはとっても悲しい」
 首を絞められ呻き声をもらす双葉をよそに、グラハムは悲しみに暮れた顔で苦しそうに胸を抑えながら言う。
「悲しみに満ちたオレの心はどうやったら癒される?ん〜考えてみたがわからない。わからないこ
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