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【銀桜】8.破壊狂篇
第3話「少年は詩を奏で桜は音もなく散る」
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告白した時の気持ちと同じじゃないか。まさかこれは『恋』って奴か。教えてくれ、オレはアンタに『恋』してるのか?」
「知らん!」

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 ときめきに輝いた眼を鼻の先までぐいっと近づけて来たグラハムに一瞬戸惑いながらも、双葉は握られた手を勢いよく振り払う。
 明らかに嫌われた態度だったがグラハムはそれすら嬉しそうににんまりと微笑んだ。
「安心してくれ。ラッキーなことにオレは年上趣味だ。おまけにアンタに冷たくされるたびオレの胸はウハウハする。つまりアンタはオレの好み100%ドンピシャだ。というわけでオレと付き合え」
 図々しいにも程がある発言に再び蹴りが炸裂する。
 だがゆらりと身体を動かしてグラハムは軽々と豪速に迫る足を避けた。
 かわされた瞬間に双葉はアクロバティックに宙で一回転して後退し、青い作業着の少年と距離をとる。
 こちらの出向きを待っているのか、それとも惚れた女を眺めていたいのか――グラハムは何をしてくるでもなく、ただモンキーレンチを宙に回して自分を見ている。
――何なんだ、コイツ。
 脈絡のない長台詞、『破壊』を楽しむ性格、狂気に溢れた笑み。
 ムカつく少年だ。この短い時間で何度怒りがこみ上げたか。
――…………。
 だが怒りこそ沸くものの、不思議とグラハムには嫌悪感はない。
 むしろ親近感のようなものを双葉は感じていた。それは決して自分と彼に共通点があるからではなく、他から来るものだった。
 止まない狂った笑みとやる気のないこの気だるさは誰かを連想させる。
――……やりにくい。
 モンキーレンチという突拍子のない武器のせいもあるが、心のどこかで戦うのをためらっている自分がいる。
 疲れが混じったダルさの残る低い声は聞き覚えがある。
 寝ぼけたような半開きの眼。長ったらしい口調。呆れるほどの向上心のなさ。
 気づけば双葉は身近な誰かと一緒にいる感覚に陥っていた。
――何を迷っているんだ、私は。
 自分の中にいる何かが余計に戦闘の判断を鈍らせる。
 だが、躊躇ってる暇はない。
 不慣れな相手とモンキーレンチをどう攻めるか。さっきの失態は金棒のような巨大レンチをすっかり打撃系の武器だと思いこんでしまった自分の判断ミスだ。再び打撃相手の戦略で戦えば先ほどのように受け止められてしまう。いいや、下手をすれば鉄パイプを曲げられるだろう。
 双葉は刀を所持していない。刀に血が付着するような戦いになったら……正直平静を保っていられるかわからない。万事屋が戦闘に陥った際は、格闘か或いは使えそうな物を即席の武器にしていつも戦っていた。仮に刃物を手にしても、威嚇や脅迫程度までに留めていた。
 『獣』を暴走させてはいけない。
 しかし意味不明な発言や見かけによらずこの金髪の少年――グラハム
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