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【銀桜】8.破壊狂篇
第3話「少年は詩を奏で桜は音もなく散る」
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残された『趣味』は創造を破壊するだけの迷惑でしかない。こんなオレは世界中の人々に謝るべきだ。謝るべきだが、謝ったところで何かが変わるわけでもなく、悲しいとしか言えなくなる。なぜだ。どうしてオレの周りは悲しみで蔓延しているんだ。苦しみなくして楽は得られないが、これは多過ぎじゃないのか」
「だったら貴様が人一倍以上に成長する努力をしろ」
 双葉の端的なアドバイスに、グラハムは納得したように何度も頷いて答える。
「そうだな。人は悲しみを乗り越えて成長する生き物だと言うが――」
 そして意味もなくモンキーレンチを天井へ放り投げて
「生憎オレは成長する気はない」
 落ちてきたレンチをキャッチして、ニヤリと宣言した。
――向上心ゼロか。
 誰かと被るツッコミを心の中で呟く双葉。
 そんな傍観者を置いて、余裕に満ちていたはずのグラハムの瞳は次第に怒りにまみれ、彼は天へ見せつけるかのように巨大なモンキーレンチを掲げて嘆く。
「なのにこれ以上成長させて俺をどこへ連れて行く気だァ。俺をこんな悲しい気持ちにさせて神は一体どういうつもりだァ?この世界はどういうつもりだァ!?クソォ悲しい。実に悲しい。この世の中に舐められてる気がして悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて悲しくて………あぁぁぁあああぁああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁッ!!」
 轟音。
 轟音。轟音。轟音。
 怒りを全て剥き出した巨大なモンキーレンチが地面を叩く。
 叩かれた地面は一気に陥没し、そして周囲の地べたはグラハムの絶叫と共鳴するようにのめり上がっていく。
「だから壊す!オレは壊す!悲しみしか与えない悲しい世界なんてブッ壊す。悲しいだろ、今ある生活がなくなっちまったら好きな事も楽しめない。そして喜べ!もう楽しみを失う事を悲しまずにすむんだからな。ハッハァ!!」
 破壊される地面。崩壊していく足場。朽ちる地上。
 嬉しくて楽しくてどうしようもなくグラハムは狂的に笑い上げ――
「ふざけるな!」
 一発の蹴りが頬に直撃した。
 それは、突き出た地面の破片を飛び台代わりに跳躍した双葉の蹴りだった。華奢な足によってあっさり吹き飛んだ少年の身体は、何度か地面を転げ回った後にようやく止まった。
 わずかな呻き声をもらすグラハムの眼前に、双葉が立ちはだかる。
「悲しみしか与えないだと?貴様がただぐうたらして楽しい事も見えてないだけだろ。そんなに驚きが欲しくば自分で探して見つけろ!」
 容赦なく怒鳴り上げ、双葉は冷徹の眼差しを眼下の少年に突き刺す。
 女の一喝を浴びたグラハムは声を失ったかのように黙りこんだ。
 そうして双葉をしばし見据え――
「おお!なんだ。今オレの胸は躍り高鳴っている。なぜだ!?これはオレが姉貴に結婚を
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