36部分:第三十六章
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こう言うとであった。バーのカウンターに向かった。そうしてそこで端麗なタキシードに身を包んだ背が高くショートヘアですらりとした身体つきの美女に声をかけるのであった。
「ねえ。これからだけれど」
「はい、これから」
「まずは飲みましょう」
最初に告げた言葉はこれだった。
「貴女の分は私が奢るわ」
「いえ、それは」
「遠慮することはないのよ。何故なら」
「何故なら?」
「私は貴女を見ている」
その目を覗き込んでいる。そのうえでの言葉であった。
「そして貴女もまた」
「私もですか」
「私を見るようになるわ」
沙耶香の目が琥珀色の輝きを見せた。その輝きの中での今の言葉だった。
「私をね」
「私をですか」
「だから。飲みましょう」
また告げるのであった。
「二人でね」
「ですが私は」
「いいのよ」
ここから先はあえて言わせなかった。沙耶香の方が上であった。
「だからね。飲みましょう」
「だからですか」
「夜はまだはじまったばかりよ」
もう妖艶な笑みを見せていた。
「だからね。これからだから」
「それでは」
沙耶香はそのまま彼女と飲み彼女の仕事の時間が終わると静かに自分の部屋に連れて行った。彼はそんな沙耶香を見て言うのであった。
「やれやれですね」
苦笑いと呆れが入っている言葉であった。肩もすくめさせている。
「そちらについては相変わらずですか」
「では今からね」
「はい・・・・・・」
バーテンの彼女は既に沙耶香に篭絡されていた。後はそのままベッドの中に。話を全て終わらせた沙耶香は彼女の楽しみを味わい続けるのだった。
黒魔術師松本沙耶香 客船篇 完
2010・3・2
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