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〜銃声と硝煙の輪舞〜
少女の葛藤
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凌ぎきってみせろ、と。

マグナテリウムは、アインクラッド第四層の主街区【ロービア】の南東に広がる森林地帯に住み着く熊のヌシである。普通に現れるモブクマより一.五倍ほどの図体を有し、有角でしかも火炎ブレスまで吐くというその様相に、当時の攻略組達は揃って「こんなのが熊であってたまるか」と絶叫したものだ。

ずらりと居並ぶ牙の合間にチロチロとした火種を見つけ、ユウキは思いっきり横に飛んだ。直後放たれた炎獄の息吹は水分をたっぷり吸った大気を一瞬で乾かした。

ブーツの靴底で苔をはね飛ばしながら静止し、思わず唇を噛む少女を、ビンを傾けながら頬杖をつく女性は軽い溜息をつく。

「……もーいい」

ブレスが途切れるとほぼ同時。

唐突に、少女と巨大熊の中間点にテオドラの長身が割り込んだ。

大した速さではなかった。だが、意識の死角に潜り込まれたように、呼吸を綺麗に合わせられた。

ギャズゴロアアアァァッッ!!という凄まじい咆哮を響かせたマグナテリウムさえも、どこか突然降って現れた闖入者に萎縮しているようにも怯えているようにも見えた。

対してまったく緊張の色も見せない褐色の女性は、飲み終わって空になったビンをその鼻面に投げつけながらフンと鼻を鳴らして不敵に笑った。

「オラ来いよ、クマ公。ちょいと遊んでやっぞ」

その挑発に感化されたのかは知らないが、肩高だけでも四メートルにも達しようかという、二層のフィールドボスだった《ブルバス・バウ》並みの巨体がいきなりスイッチが入ったかのように突進し始める。足裏を通して伝わってくる大地の振動はなかなかに迫力があったが、それに対してテオドラはゆらりと右手を上げただけだった。

交錯は瞬間。

だが、ユウキの眼が捉えたのはおおよそ現実に即した物理法則が入力されている仮想世界下においても、まだ理解しがたい光景だった。

小山のような巨体が、さらに地面から軽く三メートルほどの高さまで吹き飛ばされていた。

あんぐりと口を開けるユウキの目の前に、マグナテリウムは勢いよく突き刺さる。眼に飛び込む粉塵を手のひらで払いながら、少女は猛然と抗議した。

「ちょ、ちょっとテオドラ!危ないじゃん!」

「あぁん?避けろよそっちで」

無責任な一言を吐きながら、ストレージを操作して新たに出した酒ビンを煽りながら、テオドラはこちらを半眼で睨む。

「見ての通り、《柔法》を極めたら本質的に相手の質量やら速度やらは関係なくなる。細腕一本、脚一本でボスクラスの一撃とも張り合えるってワケだ」

だが、と前置きして彼女は続ける。

「見た目の豪快さとは裏腹に、その実とんでもなく繊細な技術でもある。もともと素手で返せないような力を持ってる攻撃を素手で返すんだ。矛盾はあるだろう。相手の攻
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