暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
少女の葛藤
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ユウキの鼓膜を勢いよく突き抜けていった。
少し離れたところにある横倒しになった古木にどっかりと座り、片手には酒の入ったビン、もう片方の人差し指をこちらに向けて大口を開けるのは、背の高い細身の女性
土妖精
(
ノーム
)
だった。浅黒い肌に、それに違和感を感じさせない彫りの深い目元と鼻が付いている。
SAOでは六王第五席に収まっていた、《柔拳王》テオドラ。
ユウキは今現在――――波乱の第三回バレット・オブ・バレッツ予選から一夜明けた十二月十四日、テオドラにあることを頼むために前々から取っていたサブアカウント、アスナとお揃いの
水妖精
(
ウンディーネ
)
ユウキとしてALOにログインしているのだった。
―――まぁ、それをちょっと後悔し始めてるけど……。
そう胸中で愚痴りながら、常とは違う水妖精特有の水色のストレートヘアを宙にたなびかせながらも、少女は眼前で小山のような巨体を固まらせている《熊》から目が離せない。
それは、毛の一本一本が針のように太い、灰色の毛皮。真っ赤に輝く二つの目玉。口からはみ出した、凶悪な牙。ダガーなみに巨大な爪が生えた、丸太の如く逞しい四肢。そして額には、黒光りする鋭い――――角。
有角の頭頂部には真紅のカラーカーソルが出ていて、記されている名前は【Magnatherium】――――マグナテリウム。
渾身の右ストレートを外されたマグナテリウム氏は、「ギュゴロロロ……」と見た目もさることながらこちらも熊らしさの欠片もない唸り声を上げてこちらを睨みつけている。
ユウキがなぜこんなバケモノ熊と、しかも丸腰で対峙しているかというと、それがこの場にテオドラがいる存在理由となる。
「《柔法》は、いなして、巻き込んで、返す技だ!弾くなんてどこにもねぇぞ!」
《柔法》の教授。
それがGGOから帰還し、ユウキが最初に望んだことである。
柔法は、開祖をエクレアとしてテオドラに引き継がれている究極的な近接格闘テクニックと言うべきシステム外スキルだ。相手の攻撃ベクトルを自分の円運動の上に重なるようにし、無効化。そしてその衝撃に自身の遠心力も上乗せしたインパクトを返すことによって、結果的に相手の放った攻撃以上のダメージを喰わせられるという恐るべき技術である。
正直、SAOの亡霊に奇襲とはいえ、いとも容易く負傷を許した今の実力をユウキはそこまで誇大評価できない。その上、待機ドームにて合流したレンからは、かの【
尾を噛む蛇
(
ウロボロス
)
】リーダー、フェイバルも敵対意思を表明していると来た。
少しでも手持ちのカードを増やしておきたい。それが今のユウキの正直な気持ちである。
そして、そのユウキの頼みを二つ返事で引き受けたテオドラが、まず少女に課したのが現状だ。
マグナテリウムの一撃を無傷で
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