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珠瀬鎮守府
響ノ章
金打
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べく提督として今此処にいる」
「部下ガ死ンデイクト知ッテイナガラモ、ソノ道ヲ歩ムト分カッテイテ提督ニナッタノデハナイノカ」
「げにその通り。しかしそれは走破する為に非ず。変えるため。そうしてこの道歩むは私が初めではない。私の前任者は死んだ。私と同じく変えようとした結果があれだった。姫よ。私は、私達は死に逃げるのではない。命を賭けているのだ」
「……ホウ」
「お前には良い話ではないが、前任は深海棲鬼との生身の一騎打ちを果たして死んだ。無論戦うしかなかったという状況はあるが、ただ同時に、きっと脳内には死んでも良いと思っていたに違いない」
「どういう事」
 質問を投げたのは背後に居る伊勢だった。
「前例のない上位個体、それも殆どの出現例の無い姫の鹵獲、これはあの場で柏木が生きていれば、最重要警護対象が生きていれば果たされなかった。あの時全てが手遅れとなったが故に姫は殺されずにここにいる。提督の立場ならあの場で撤退するべきだった。例え他の誰かが犠牲になろうとも」
「なっ」
「オ前ト同ジ道ヲ歩ンダ酔狂ナ者ガ居タノカ。ソノ御蔭デ今生キテイルトハ、複雑ナモノダ」
「分かるか姫。お前は、お前が思っているよりかも私にとってはとても重要な位置にいる。故に私は対等であると見据え誠意を見せる。お前の望みに出来るだけの努力をしてみせよう」
 姫は暫く瞼を閉じて、そうして開く。立てて構えていた軍刀を握り直し、徐ろに刀身を収納する。僅かな金属音が鳴った。金打が、行われた。
「デハ、ソノ誠意トヤラヲ見セテモラオウ」
 不敵に笑みを浮かべる姫に対して、私は同種の笑みを以って返した。
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