第一話
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「……眠い」
学校の昼休みは危険だ。
僕、三鳩 三戸はたださえ睡眠欲求が骨と皮膚と布を着て歩いているような人間なのに。
昼下がりの窓際から注ぐ光の暖かさと丁度の良い満腹感が僕を襲う。
とても気持ちが良い。
今日もこのまま寝てしまおうか。
「ミートー!」
「ぐふっ……!」
背後から猛烈な打撃。
とても痛い。
「……誰」
「相変わらず萎えてやがんなぁ?ええ?」
「太郎……僕は眠いんだけど」
長谷川太郎。高校に入って出来た友人だ。
女好きでいつでもテンションが高い。鬱陶しい時もあるがいいヤツである。あと坊主。
「そんなことより聞いてくれよミト」
「僕の睡眠がそんなこととは」
「おれ、とうとう見つけたんだ!」
「何を」
足りない知恵を?
僕をよそに太郎は拳を上げ噛み締めるように言った。
「恋、さ」
「何回目だよ」
「今回はマジなんだって!」
その言葉も何回目だ。
教室にいるクラスメイトの視線が凄い冷たい。これやだな。授業中隣の席のやつが怒られてるんだけど、自分も怒られてるみたいになるやつに似てる。
「おれのマイエンジェル……。昨日、一年の教室の前を通ったら、見つけてしまったんだ。黒髪ロングのヤマトゥナデシコを」
おれのマイエンジェルとは。僕も寝て睡眠したい。
「名前は?」
「あぁ、黒髪ヤマトゥナデシコと付き合いてェーッ!」
知らないんだ。
まぁ太郎のこの悪癖もそのヤマトゥナデシコに振られれば治るはずだ。
「ぜひがんばってね。応援してるよ太郎くん」
「あぁ、応援しててくれ。もうすぐ夏休みだからな!高校最後の夏休み、ようやくおれは大人の階段を上るんだ。……早くあのでけえ胸揉みてえ」
クズだな。
僕が言えたことじゃないけど。おっぱいは好き。
「貴様との童貞卒業勝負はやはり出来レースだったようだな……フッ」
そんなレースした覚えないけど。
僕が通っている高校は偏差値も特に高いわけでもなく、低いわけでもない。通っていた中学では大多数がこの高校に何となく入学している。僕も例に洩れず。
だからといってどうという事は一切ないし、家が近いからといって歩いて3分というほどインスタントな距離でもない。
下校時刻は終わりではないのだ。まだゴールではない。むしろ、最後の試練なのだ。
「あ”ぁ疲れた足痛い眠い制服暑い眠い早く家帰りたい眠い」
独り言である。
ごめんよ、すれ違った小学生。
怖かったね。
河原の土手を歩く。
この道はいわゆる近道という奴だ。
季節は春下旬。夕方の風が気持ちがいい。
「……ここで寝たい」
ふと、思った。
土手に生えている緑色
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