第26話
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袁紹が他者に抱く劣情に敏感に反応するようになっていた。人前では名族然とした態度を崩さない袁紹だが、桂花の女としての勘は容易くそれを看破していた。
始めこそは彼女に翻弄された袁紹だが、良くも悪くも彼は学習能力が高い。
すぐさま対策を考え付き、桂花の意識を逸らすことに成功していた。
基本的に生真面目な桂花は、公私混同しない文官の鏡である。私事と仕事で自分を使い分けるのが巧く、切り替えが早い。袁紹はそれを巧みに利用。嫉妬の矛先が向く前に彼女の思考を切り替えさせたのだ。
もっとも、世の中というものは不思議なもので
「麗覇様、桂花さんは誤魔化せても――」
「アタイ達までは誤魔化せないぜ」
邪な考えを持つものには、相応の報いを与えるように出来ている。
袁紹の両隣に控えていた斗詩と猪々子。彼女達は袁紹の肩に手を置き、何ともいえない威圧感を発していた。
「麗覇様、後でお話しが」
「もちろん空けといてくれるよな?」
そして硬直した袁紹に語りかける。彼は思わず助けを乞うように周りを見渡したが、桂花は先程の案件を思案しており、風は寝息を立てている。
恋は音々音を可愛がり、星にいたっては事の成り行きを面白そうに静観していた。
「……ハイ」
やがて蚊の鳴くような声で返事をする。その時、彼の顔から光る何かが零れ落ちたが、きっと気のせいだろう。
名族は人前で泣いたりはしない。泣いたりはしないのだ。
「そういえば、お主等姉妹は真名で活動しているのか?」
「はい、私達は観客との距離を少しでも縮めるべく、皆に真名を許しています」
「真名で呼ばれたほうが嬉しいよね♪」
「……張宝って呼ばれても反応出来ない自信があるわ」
この世界において真名とは神聖なるもの、しかし扱い自体は当人の自由だ。
彼女達のような使い方は異質だが、特に問題は無いのだろう。
「さて、お主達の今後についてだが……」
「ちぃ達をどうするつもり!?」
何気なく袁紹が呟いた一言で、再び地和が警戒心を露にし、姉妹の前に出る。
「ちぃ姉さん待って! 最後まで話しを聞いてからでも遅くはないわ」
「……人和がそう言うのなら」
妹に窘められ、不満そうな顔をしながらも地和が下がる。彼女の警戒心は過剰にも思えるが、無理も無い。袁紹の周りには多種多様の美女が居るのだ。一騎当千の猛将から、戦場を思い通りに操作する軍師まで、一人ひとりが英傑であったが、そんな事情を知らないものから見れば、袁紹が美女を侍らせているだけのようなものだ。
旅芸人として、自分達の容姿にある程度自信のある地和からすれば、ある種の疑惑を持っても不思議ではない。
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