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恋姫†袁紹♂伝
第26話
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「は、はい……ですが――」

 人和は明らかに怯えている。大陸屈指の名族と相対しているのもそうだが、何よりその袁紹に世辞を見抜かれたのが大きかった。自分達姉妹の処遇は、言ってしまえば彼の気分次第で決まるようなものだ。ならば、少しでも心象を良くしたいと思うのは当然である。
 
 袁本初を良く知らない人和は、彼を褒め称える事で気を良くさせようとした。
 彼女の人生観において、上に立つ人間と言うのは総じて世辞に弱いものだ。立場が上であればあるほどその傾向が強いため、袁紹も例に漏れず好意的に世辞を受けるものだと思っていた。
 
「安心するが良い、このくらいの事で腹を立てていては名族など務まらぬ故な、フハハハハ!!」

「……」

 二度も許すと言葉にし豪快に笑い声を上げる袁紹。それを見て、人和はようやく安心したように溜息を吐いた。

 重ねて言うが袁紹と三姉妹は初対面である。しかし袁紹の纏う空気、言動には他者を理屈抜きに安心させる何かがあった。

「さっそくで悪いが、お主達と黄巾の実情を聞かせてくれるか?」

「では、私が――」

 姉妹の中で最も知と学に優れた人和が今までの経緯を語りだす。

 ――旅芸人としての出発地点
 ――歌と踊りによる芸で、一世を風靡(ふうび)するという目標
 ――伸び悩んだ自分達の下に届いた『太平要術の書』
 ――大陸の疲弊、痩せ衰えていく観客達……
 ――そして黄巾の乱

 彼女達の救出を願った男よりも正確に、しかし概ね聞いたとおりの答えが帰って来た。
 
「ふむ、太平要術の書……か、今は何処に?」

「それなら、天和姉さんが」

「え? ちぃちゃんじゃ……」

「私は持っていないわよ、最後に見ていたのは姉さんじゃない!」

「あ、あれれ〜?」

 妹二人に白い目で見られ、天和は慌ててぺたぺたと自分の体を触る。何かを探している人間がとる古典的な行動だが、彼女の衣服には荷物を保管しておける場所など――

「ここかな〜?」

「……む」

 あった。衣服にではなく身体にだが――、襟を前に引くようにして天和は胸の谷間を確認する。位置的に袁紹からも丸見えだ。妹達とは比べ物にならない豊かな果実が映り、まさに眼福眼ぷ――「麗覇様?」 

「時に桂花、受け入れた十五万の『難民』はどのような様子だ?」

「え? えっと、流石に人数が人数でしたので当初は各地で混乱が起きました。ですが兼ねてから受け入れられる体勢を取っていたため、それも小規模なものに。現在は安定して作業に合流できております」

「うむ! 引き続き彼等の監督を頼む。異変があったら直ちに知らせよ」

「承知致しました」

 瞳から光が消えかけていた桂花。彼女はある日を境に、
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