第26話
[1/5]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
―南皮、袁家の屋敷―
「色々あったがようやく顔を合わせることが出来たな、我が袁家現当主、袁本初である」
広宗での一件により十五万の人員を受け入れた袁紹は、余りの多忙に張三姉妹との面会が叶わなかった。そこでこうして南皮で改めて話しを聞く事にしたのだ。
「まずは私達を助けてくれてありがとう。私が長女の天和だよ! よろしくね♪」
張三姉妹の長女天和が、ウィンクをしながら元気良く礼を兼ねた自己紹介をしてくる。
黄巾の中にあって張角として祭り上げられてきただけに、今まで感じてきた重圧は並みの物ではあるまい――と、袁紹はどのように接するべきか悩んでいたが、どうやら杞憂のようだ。
長く美しい桃色の髪を揺らしながら軽く跳び、左手を上に掲げている姿には憂いを感じない。
知らない陣中にあって無警戒もいい所だが、これも彼女の個性なのだろう。
彼女のフランクな口調に眼鏡の娘が慌てているが、袁紹には特に気にしている様子は無い。
彼の周りに居る者達は、言葉遣いが独特な者が沢山いる。丁寧な者から男口調の者まで十人十色だ。故に咎めることはない。袁紹とその縁にある者達を軽んじたりしなければだが……
「次女、地和よ……」
続いてポニーテールの娘が前に出た。その目からは警戒の色が浮かんでおり、最低限な挨拶からも、どれだけ此方を怪しんでいるかがわかる。
無理も無い。彼女達の処遇など袁紹の采配一つでどうにでもなるのだ。
本来であれば媚を売ることで心象を良くしておこうと思うはずだが、地和にはそれが袁紹に通用しないことを本能的に感じ取っているのか、姉妹達の前に立ちふさがるように前に出た。
不快に感じられるかもしれない動き、だが袁紹には先程と同様負の感情は沸いてこない。
彼女の強気なソレを良く理解できたからだ。天然な長女、内気な三女の中にあって次女である地和は二人を守るべく、事の起こりには姉妹の前に出る役割を担ってきたのだろう。
それに、こうして姉妹達の前で袁紹を睨む彼女の瞳には、少なからず恐怖が浮かんでいる。
なるべく早く、彼女の不安を取り除いた方が良かろう――と、袁紹は三女に目配せをして続きを促した。
「三女、人和と申します。助けて頂き有難う御座いました」
最後に挨拶をしたのは三女、姉に比べ地味な見た目だが、その瞳には姉達には無い知性の高さを感じさせる。恐らく彼女が姉妹の財布を握り、行動の方針を決めたりしているのであろう。
「黄巾内部にあっても、袁紹様のご高名は良く存じております。特に――「もう良い」え?」
「自分達に対する心象を良くしたいのはわかる。だが――見え透いた世辞ほど不快なものはない」
「っ!? し、失礼致しました!!」
「かまわぬ、悪気が無い事は承知している
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ