第156話 張允
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宗は悠然と立ち上がると張允にゆっくりと近づいていく、そして張允の左横に立つと彼女を見下ろすように視線を向けた。
その時だった。
張允の後ろに片膝を着き控えていた男二人が剣を抜き放ち正宗の命を奪わんと剣を振り下ろした。正宗は迫りくる剣の刃を避けることなく冷めた目で見つめていた。泉と伊斗香は慌てて自らの獲物である槍と剣で二人を取り押さえようと近づくも時既に遅く正宗に刃は届いていた。男二人の表情は正宗を殺したことえの達成感に満ちていた。だが、すぐに表情を凍りつかせて正宗に再び剣を振り下ろそうとした。
しかし、その剣は振り下ろされることはなかった。正宗が剣を抜き放ち男二人の腕を切り落としたからだ。右側の男は咄嗟の出来事にたじろぎ後ろに下がるが、背後から迫る伊斗香に胸を剣で一突きされ口から血を吹き出し絶命した。
左側の男は正宗によって袈裟斬りにされた上に首を刎ねられた。地面に転がった首の表情は動揺したままだった。伊斗香は首の表情を見て正宗の剣さばきの凄さに驚いているようだった。
謁見の場はあたりに血しぶきが飛び血臭と相まり酷い状況になった。朱里は直ぐに部屋の外に控える近衛に命令するために動き出した。正宗は血しぶきを浴びた状態で張允に視線を向ける。張允は彼の横ではなく、足をばたつかせながら正宗の玉座に向かって下がっていた。彼女は正宗の視線に気づくと体を震わせ必死に這い逃げようとした。しかし、彼女の行く手を塞ぐように泉が立っていた。
「正宗様、張允をいかがいたしますか?」
泉は張允を呼び捨てにした。彼女の中では張允は既に殺す存在なのだろう。
「何もせん」
「何をおっしゃているのです!?」
泉が正宗に言うと部屋の中に正宗の近衛が入ってきた。部屋の中の惨状を見ると皆絶句していたが、朱里に命令され屍体を運び出す準備をはじめた。
「張允、その方は顔に大怪我を負っているな。その怪我は誰にやられたのだ? 先程の二人組か?」
泉と荀爽と伊斗香と桂花は張允に視線を向けた。張允は正宗の言葉に堰を切ったよう嗚咽しながら泣き始めた。彼女の鳴き声はくぐもったものだった。明らかに鳴き声が普通ではない。泉は張允と面識があるため、彼女の声を聞いたことがあるだけに張允の声の変化を感じとっているようだ。泉は張允が恐怖に震えて声が変わっていると思っていたのかもしれない。それで気づくのに遅れたのだろう。
正宗は手に持った剣を投げ捨てると血に汚れた衣を脱ぎ、自分の手についた血の汚れを衣で拭き捨てた。そして腰をつき咽び泣く張允の元に近づき膝をついた。
「朱里、兵達を一旦下がらせろ。私は張允と話がある」
正宗は背中越しに朱里に命令を出した。片付けの指図をしていた朱里は近衛に命令を出し部屋から下がらせた。
近衛が全て退出し終わると正
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