第156話 張允
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かりしふふ文をおと届けにまま参りまました」
張允はまともに喋れずにいた。張允は声と体を震わせながら懐から竹巻を取り出すと顔を伏せ、その竹巻を正宗の方に向けて差し出した。竹巻を支える彼女の両の手は震えていた。しかし、彼女の後ろに控える二人の男は整然と頭を下げていた。正宗は張允から視線を移し、二人の男に視線を向けると一瞬鋭い視線で見つめた。
「張允、そのように怯えてどうしたのだ? 余はお前を取って食うことはせん。落ち着いて話せ」
「は、はい。おお気遣いありがとうございます」
張允の喋る声は未だ震えていた。
「張允、蔡瑁からの文を読み上げてみよ」
正宗は張允に言った。張允は体を硬直させ更に震わせていた。彼女は文の内容を知っているだろう。周囲の者は理解した。ここまで彼女が恐怖するということは正宗を痛烈に侮辱する内容なのは間違いない。
「張允、その文を読み聞かせよ」
正宗はもう一度言った。張允は体を震わせるだけで正宗に何も答えることができずにいた。
「張允殿、使者としての役目を果たされてはいかがか」
泉も張允に注意した。すると張允は震える手で文を開いていく。張允は震える声で文の内容を読み上げた。
劉正礼は荊州を私し簒奪せんとする大逆の奸臣である。
罪を捏造し私に擦りつけて私を賊に貶め誅殺しようと謀を弄している。
劉正礼の本当の狙いは私に非ず。
劉正礼の本当の狙いは義姉の劉荊州牧である。
劉正礼は劉荊州牧を失脚させ荊州を我が物することであろう。
劉荊州牧が失脚すれば次は荊州の諸豪族達へその歯牙が向くであろう。
このまま劉正礼を見逃し、劉正礼に荊州を奪われれば天下を我が物にせんと天朝に弓を弾くのは明白である。
悪辣な知恵で荊州を狙う奸臣劉正礼を見逃すことはできない。
私は荊州豪族の意地を劉正礼に見せ天朝のために兵をあげる。
狡猾な劉正礼率いる軍を蹴散らしたあかつきは劉正礼の面前で袁本初と袁公路の両名にこの世生まれたを悔いるほどの恥辱を味あわせ処刑し、その屍は朽ちるに任せ野に打ち捨ててくれる。
大逆の奸臣である劉正礼は私が討つ。
大義は私にあり。
劉正礼の首を落とし蔡一族の威光を荊州に知らしめる。
劉正礼よ。
その首を洗って待っているがいい。
荀爽は張允を唖然とした表情で見つめていた。朱里、伊斗香、桂花の三名は張允を憐れむような視線を向けていた。
泉は険しい表情で張允を睨んだ。そして、張允は竹巻を地面に落とし体を震わせていた。
正宗は無表情に変わり張允と後ろの男二人の様子を伺うように凝視していた。
「安い挑発文だな」
正宗は酷薄な笑みを浮かべ張允に鋭い視線を向けた。彼の声に反応するように張允は体を固まらせた。
正
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