第156話 張允
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しろと申されました。だから私は正宗様の元にいるのです」
伊斗香は笑顔で荀爽に言った。荀爽の表情は劉表と伊斗香の間で何があったんだろうという表情だった。伊斗香は劉表にとって蔡瑁と並んで側近だったからだ。
「?異度殿、蔡一族討伐には参加されるのですか?」
「蔡一族討伐は私の献策ですので参加します」
「貴方が献策されたのですか!?」
荀爽は伊斗香のことを引きつった表情で見つめた。昨日まで同僚だった者とその一族を皆殺しにすることを正宗に献策する伊斗香の苛烈さに驚いている様子だった。
荀爽が疲れた表情で俯いていると正宗の近衛が部屋に入ってきた。近衛は荀爽の姿を確認すると深々と頭を下げた後、正宗の元に進み片膝をついて拱手した。
「清河王、蔡徳珪からの使者が三人参っております」
その場にいる皆が驚いた表情をしていた。ここに至って蔡瑁が命乞いなどする訳がないと思っていたからだ。
「使者は何と言っている。蔡徳珪から預かった文を直々にお渡ししたいと申しております」
「使者の名は?」
正宗が近衛に尋ねた。
「名は張允と申しております。顔を布で隠しており怪しい風体でした。布を外して顔を見せろと申しましたが全く耳を貸しませんでした。追い返しいたしましょうか?」
近衛は正宗に使者のことを説明した。覆面をした使者など聞いたことがない。蔡瑁の寄越した文に正宗は興味を持ったのか近衛に中に通せと言った。ここに朝廷の使者である荀爽がいることも大きかったのかもしれない。蔡瑁の文がまともな内容であるわけがない。それを荀爽に見せれば王允も蔡一族族滅も致し方なしと一定の理解を示すと思ったからだろう。
正宗の前に現れた三人の使者は異様だった。覆面をした張允が拱手した状態で最前面に。彼女の後ろに屈強な体躯をした男二人が片膝を突き拱手していた。この二人は帯剣していた。正宗が許したからだ。正宗はこの二人が刃傷沙汰を起こすことを期待しているのかもしれない。正宗以外は使者を厳しい目で見ていた。
正宗は覆面をした張允の足元から頭まで見て、顔のところで視線を止め凝視していた。急に訝しんだ表情で張允のことを見ていた。その様子に張允は体を固くさせていた。彼女は顔を見られるのが嫌なようだ。蔡瑁に鼻を切り落とされているので当然だろう。
張允は伊斗香に視線に捉えると何か言いたげに目で訴えるも、後ろの男二人に視線を一瞬向け諦めたように正宗に視線を戻した。伊斗香は張允から視線を向けられるも視線を逸らした。張允と知り合いにも関わらず関わる気がなさそうだった。
張允は諦めたように両手を地面につけ正宗に対して平伏した。
「りゅ劉し車騎し将軍、ここのた度はおめ目どど通りいたただきか感しゃ謝いたしします。おお叔ば母・ささ蔡徳珪からああ預
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