第156話 張允
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たからこそ、車騎将軍に御下命したことゆめゆめお忘れ無きいただきたく存じます」
正宗は荀爽の話を聞き終わると強く頷いた。朱里と伊斗香は冷めた視線を荀爽に向けていた。荀爽は劉弁の言葉を借りて、正宗の行動を牽制したのだ。荀爽の主人である王允の命令だろう。王允は正宗が荊州の政情が不安定になるような真似をしないと信じているが万が一を考えてまわりくどい伝え方をしているのだろう。
「皇帝陛下の民を慈しむ心に私は感動した。余も皇帝陛下と同じ想いだ」
正宗も荀爽の話から意図は読み取ったのか荀爽に意味深な笑みを返した。その表情に荀爽は一瞬苦笑いし平静を装った。彼女は正宗が自分の意を理解してくれたと思ったのだろう。少し安堵していた。
「筍侍中、この後はどうされるつもりだ?」
正宗は徐に荀爽に聞いた。
「できれば車騎将軍にご同行させていただきたく存じます」
正宗は両目を大きくして荀爽を見た。それは朱里、伊斗香、桂花三人とも同じだった。荀爽は戦場とは縁遠そうな雰囲気を放っていたからだ。それにこれから蔡一族を根切りにするために出陣するのだ。免疫のない荀爽に有る事無い事王允に報告されては困ると思ったのか正宗と他三人の表情は困惑していた。
「筍侍中、本気で付いてくるのか?」
「はい」
荀爽は正宗を見て言った。
「正直気分の良いものではないぞ。特に今回はな」
正宗は表情を暗くした。荀爽は正宗の様子を見て何か察したのか言葉を選び正宗に聞いた。
「何か問題でも?」
荀爽の表情は剣呑としていた。
「問題はない。ただな。豪族の動きが問題なのだ。私が檄文を発したが荊州の豪族からの返事が芳しくない。特に北荊州はな。皆、兵の供出でなく兵糧の供出を申し出ている。多分、蔡一族を恐れてのことと私の器量を計りかねて様子見をしているのだろう。もしくは私が蔡瑁一人の首で満足すると考え、私が荊州を去った後のことを考えているのかもしれん。だから日和見の輩に私の意志を示す」
荀爽は正宗が続きを話すのを待っていた。
「余は蔡一族を一人残らず根絶やしにする。手始めに襄陽県の周辺に居を構える蔡一族の村々を襲撃するつもりだ。勿論、蔡一族以外に手をかけるつもりはない。蔡一族以外の者に投降を呼びかけ、それでも投降の意志がないのであれば蔡一族問わず粛清することになるだろう。そなたはそれに耐えられるか?」
正宗は重い口を開きゆっくりと話した。彼の表情は優れなかった。荀爽は彼が本気であることを察した。同時に気乗りしていないことも。
「お考え直しなさる余地はございませんでしょうか?」
荀爽は困った様子で正宗に言った。
「荀侍中、恐れながら申し上げさせていただきます。荊州の豪族達の態度を見る限り、このまま
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