第2話
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ましさをばきばきと噛み砕いて出した答えは、「友好関係を結んで自分の地位をさらに上げよう」というものだった。彼女にはぜひとも経済学部国際政治学科に入学してもらいたいものだ。
さて、聴いていた曲が終わった浩徳は場の空気が高揚しているのを察知して、机に張り付いてぺしゃんこになっていた頬をさすりながら顔を上げた。
瞬間、固まってしまった。
無理はないだろう。明るさに慣れない目を細めながら横を見れば、見知らぬ人物、しかも、言葉では言い表せないとはこのことか、と思うほどの美人が隣の席に座っているのだから。
だが浩徳は彼女が誰かを考える前に、自分が本当に『高山浩徳』であるかどうか確かめようとした。というのも、前日の塾の授業で量子力学の小話を聞いた際、不確定性原理についてやけに興味を持ったからである。俺は今ブラジルにでもいるのか? などと馬鹿なことを考えながら、窓の外や教室を見回したが、何のことはない。いつもの教室である。男子が向けてくるありったけの敵意と羨望のまなざしを除いては。
「席の隣の高山君は、青山さんにいろいろ教えてあげてください」
中森の言葉に我に返った浩徳は、一体何を教えればいいのか分からなかった。勉強のことか、クラスのことか、先生のことか、いや、そんなことはどうでもいい。とりあえず、挨拶だ。
「た、高山です。よろしく」
失敗した。少し声が裏返った。クラスの多くがこれを笑う。これはとんだ失態だと顔を赤くさせている浩徳に、彼女が口を開いた。
「青山です。よろしくね」
浩徳の寝起きの眼には、彼女の笑顔は眩しすぎた。
なぜかそわそわして落ち着かない理由を、浩徳はちゃんと分かっていた。隣に誰もいないのはもとより、寝ていても教師に注意されることが少ない窓際のこの席を、浩徳は家宝のごとく守り続けてきた。だが、今や彼のその隣には謎多き帰国子女、しかもかなりの美人が座って授業を聞いているのだから、居心地が悪くそわそわしてしまうのも無理はない。一度寝てリフレッシュしようなどと思っていた矢先、件の青山美月が小声で話しかけてきた。
「そこの席って居心地良いよね」
拍子抜けした浩徳は、頬杖をつきながら顔を窓の方にそらして
「うん。まあ、ずっとここだったから」
と無愛想に返事した。
「やっぱり。そこの席取る人って、自分とクラスと距離を置く人か、抽選で落ちた人だけだし」
浩徳は少しむっとしたが、なるほどその意見は正しい。朝は静かにしていたい彼にとって、同級生とある程度の距離を取るには格好の席であった。
「よく分かるね」
「いや、朝礼でざっと見た感じ、分かった。騒
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