第二十九話
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。紫音にだってそう言われたし。「お父さんと話さないっていうのは良くあると思うけど、そこまでって珍しいっていうか徹底してるよね」って。
「どうかしたの? 」
王女は気付いたのか聞いてきた。
「うん。王女は俺が親父の仕事が何かさえ知らないのをそんなに変に思わないんだなって思ったんだ」
「人間の親子の関係がどうなのかなんて私にはわからない。そもそも私は人間ではないからな。比較などできないよ……それに私とて父や母と話した記憶すらないから」
一体どんな親子関係なのか気になったけど、なんだか辛そうな顔をしていたのでそれ以上のそのことを聞くのはやめた。
「とにかく、お前には何か秘められた能力があるんだろう。その素質を寄生根との戦いの時にさらに開花させることができればいいんだけど。……とはいっても、どうやれば発現させられるかは私にも見当がつかないんだから手の打ちようが無いわ。もう不確かなものを調べている時間はないんだから。なんだかんだで結局のところ、行き当たりばったりの運任せということか。全くの無策で挑まなければならないなんて最悪だわ。これがすべてを決するという勝負になるかもしれないのに……でも、それも仕方ないわね」
諦めたように言うと、ペットボトルのお茶を口に含んだ。
「うえ、やっぱり不味いわ。こんなのよく飲めるわね、お前達は」
と、またぼやいた。
俺の秘められた能力……。
あの心の奥底に潜んだ凄く邪悪な【意志】。
俺であって明らかに俺じゃない何かが、たまにおれの意識の表層に現れて俺の意志を支配することがある。その時、明らかに普段から比べると数段上の力が出る。それは戦いの中で知ったことだ。その力をうまく使えれば明らかに勝機を掴む確率が上がりそうな気がする。あのときの力の増幅感・飛翔感は半端ではない。でも【あれ】の力を借りて戦ったとして、再び【あれ】を押さえ込むことができるんだろうか? そう思うとその力に頼るわけにはいかないって思う。
それは自分が自分でなくなるんじゃないかという恐怖と、乗っ取られた後の俺が果たして人としての行動がきっとできないという確信めいた恐怖の二つの恐怖に怯えを感じるんだ。
俺は学校で蛭町達をぶちのめしたときに、その【あれ】が俺の意識の表層にまで上がってきて、その意志のままに俺が奴らに暴行を加えたとは結局、王女には言えなかった。
あの時は何とか引っ込んでくれたけど、今度はどうなるか分からない。
あの時、【あれ】がずっといたままだったら、俺は蛭町達を殺していた。それもただ殺すだけじゃなかったはずだ。徹底的に、そして残虐に解体していたはずなんだ。
俺に制御することが可能なのか?
最悪はあの力に頼らなければならなくなったりするんだろうか? できればそれは避けておきたいけど
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