第二百二十話 戸次川の戦いその十四
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義久は歳久と家久を呼んでだ、二人に告げた。
「後詰は御主達二人じゃ、しかしじゃ」
「はい、何としてもですな」
「生きて帰れと」
「次の戦がある」
それ故にというのだ。
「御主達は生きてじゃ」
「その次の戦にもですな」
「出て」
「そのうえで」
「戦えと」
「だからじゃ、生きて帰るのじゃ」
こう二人の弟に告げた、そしてだった。
二人に後詰を任せてそうして自身は義弘と共に主力を率いて下がった、歳久と家久は実際に後詰を務め。
織田の大軍の前に立ちはだかった、そのうえで。
「ここはじゃ!」
「敵を一人も通すな!」
「味方を逃せ!」
「我等はそれから退くぞ!」
こう言ってだった、鉄砲を撃たせ弓矢を放ってだった。
織田の軍勢を止めていた、その凄まじさを見てだ。
信忠もだ、こう全軍に告げた。
「追い討ちをかけたいがな」
「はい、この守りでは」
丹羽が信忠に応えた。
「下手に攻めますと」
「こちらが火傷をする」
「では」
「これ以上は攻めるな」
今は、というのだ。
「よいな」
「はい、では」
こうしてだった、信忠は歳久と家久の軍勢をこれ以上は攻めさせずにだった。そのうえで彼等を下がらせた。それから勝鬨を挙げさせたが。
すぐにだ、周りの家臣達に言った。
「明日からまた軍勢を進める」
「南にですか」
「さらにですか」
「進めそのうえで」
「島津の領地を攻め取っていきますか」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「島津との次の戦に向かうぞ」
「はい、わかりました」
「それでは」
「明日からまた」
「兵を進めていきましょう」
家臣達も応える、信忠率いる織田家の軍勢は戸次川では勝った。だがそれは次の戦に向かうものでしかなかった。島津との戦はまだ続くのだった。
第二百二十話 完
2015・3・13
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