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ドリトル先生と森の狼達
第九幕その六
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 ここで王子がこのことを言いました。
「それとね」
「それと?」
「この辺りに山の神様の話があったね」
「ああ、その話だね」
「迂闊に入ると祟られるとか」
「この辺りにもそういう話があるんだよ」
 実際にとです、先生は王子に答えました。
「あとね」
「妖怪だね」
「そう、この辺りにはその話もあるんだよ」
 実際にというのです。
「一本だたらのね」
「その特定の日に封印が解けて山に入れば血を吸われるっていう」
「その妖怪もね」
「この辺りに話があるんだ」
「奈良県と和歌山県の境だからね」
「それ本当の話のかな」
「真相はわからないけれど実際にそうした話があるよ」
 先生達が今いる奈良県と和歌山県の境にはというのです。
「この辺りにはね」
「その話も使えるかな」
「迂闊に山に入れば襲われる」
「その話が広まれば」
「ここまで来る人減るよね」
「ことの真相は不明でもね」
「使えるね」
 先生は確かなお顔で、です。王子に答えました。
「じゃあその話もね」
「広めようね」
「そうしよう、まあそうした話を迷信って言って信じない人もいるけれどね」
「いるね、無神論というかね」
「科学を万能って思う人もね」
 科学でこの世のあらゆることを説明出来ると主張している人がです、先生はそうした考えは持っていないです。
「いるね」
「そうした人はどうすべきかな」
「そうだね、そうした人はね」
 是非にと言う先生でした。
「そうした人へのやり方があるよ」
「あるんだ」
「うん、とにかくあらゆる手段を使ってね」
 そのうえでと言う先生でした。
「ここに迂闊に人が入られない様にしよう」
「狼さん達を守る為に」
「公にすべきかどうかも迷っているけれど」
「そのことなんですけれど」
 今度はトミーが先生に言ってきました。
「ニホンオオカミさんのことを公にするかどうか」
「そのことをだね」
「誰かに相談しますか」
「僕達で考えるよりは」
「そうした方がいいかも知れないですね」
「そうだね、そうしたお話は」
「ここでお話しても仕方ないですね」
 トミーも先生に言います。
「神戸に戻ってからですね」
「大学にね」
「お話すべき人はおられますよ」
「日笠さんだね」
「はい、あの人ならです」
 トミーは笑顔で応えます、先生もそのことは同じですが違うところがありました。その違うところはトミーは日笠さんのことも考えていますが。
 先生はニホンオオカミさん達のことを考えています。そのことだけを。
 その違いはトミーは気付いています、そして。
 先生にです、さらに言うのでした。
「じゃあ日笠さんと」
「うん、お話をしてみるよ」
「そういうことでお願いします」
「それじゃあね」

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