第九幕その六
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「何か困っているのかな」
「あっ、貴方は確か」
熊は眉を顰めさせたお顔をカエルマンに向けました。
そしてです、こう言うのでした。
「カエルマンさんだね」
「僕のことを知ってるのかな」
「そちらの魔法使いさんもケーキさんもね」
熊は二人も見ました。
「知ってるよ」
「そうなんだね」
「貴方達はオズの国の名士だからね」
だからだというのです。
「知っているよ、僕でもね」
「そうなんだね」
「そう、それでね」
さらに言う熊でした。
「貴方達がこの森に来てるなんて」
「ちょっと冒険でね。それよりもね」
「それよりも?」
「見たところ君は機嫌が悪いね」
カエルマンは熊に単刀直入に尋ねました。
「そうだね」
「うん、実はね」
熊は困ったお顔のままカエルマンに答えました。
「そうなんだ」
「右の前足の掌をいつも見ているけれど」
「棘が刺さっているんだ」
「掌に」
「それがずっと抜けなくて」
熊は困ったお顔のままカエルマンに自分の事情をお話します。
「困っているんだ、痛いしね」
「ううん、何かと」
「大変な状況で」
「事情はわかったよ」
「この棘をどうしてもね」
抜きたいと言う熊でした、自分の掌をじっと見つつ。
「そうしたいけれど。ただ」
「何をしてもなんだ」
「抜けないんだ、どうすべきかな」
「見せてくれるかな」
カエルマンは熊のお話を全て聞いてからです。
あらためてです、こう熊に申し出ました。
「その掌を」
「うん、じゃあね」
熊も頷いてです、そして。
カエルマンの方に歩み寄ってでした、その大きな掌を差し出してカエルマンに見せました。見ればそこには。
棘が刺さっています、親指の付け根のところに。その棘は小さくそれでいて深く刺さっていて微妙な感じです。
熊の前足の指では抜けそうにありません、その掌を見てです。
カエルマンは微妙なお顔でこう言いました。
「これは厄介な状況だね」
「うん、だからね」
「君には抜けないね」
「何をしてもね」
「いや、この棘は」
ここでカエルマンはお顔の左右に離れている二つの目を光らせてでした。そのうえで熊に笑顔で言いました。
「抜くことが出来るよ」
「本当に?」
「うん、やり方があるよ」
「それはどうしればいいのかな」
「君は蜂蜜が好きだね」
カエルマンは熊にこのことも尋ねました。
「そうだね」
「熊だからね」
これが熊の返事でした。
「やっぱりね」
「そうだね、その蜂蜜をね」
それをというのです。
「この掌に塗るとね」
「棘が抜けるんだ」
「蜂蜜の方に出ていくんだ」
その棘がというのです。
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