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トワノクウ
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最終夜 永遠の空(六)
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でも多く人と妖の無差別な殺し合いを止めるため、刀を揮っては争う者たちの間に入り、このような行為は無意味だと訴えた。

 だが、朽葉自身もまた、憑き物筋という重石を負っている。

 不忍池から湧いた瘴気の地面に立っているだけで、犬神の凶暴な衝動に、自分の理性が徐々に塗り潰されていくのを自覚していた。

(犬神に身を委ねれば楽になれるんだろう。だが、そうなれば私も、妖として人を虐殺してしまう。それだけはだめだ。そうなったら――鴇が、悲しむ)

 朽葉の顔色の悪さが気取られたのか、猿の妖が朽葉に飛びかかってきた。

「伏せろ!」

 朽葉が行動するより速く、萱草が篭手の仕込み刃で猿の妖を斬って捨てた。

「萱草……すまない」
「安心しろ。急所は外した」

 事も無げに言っているが、萱草とてこの瘴気に汚染された地面に立っているのだ。いつ意識が闇に呑まれてもおかしくない。

 くうと鴇時はがしゃどくろに飲み込まれ、前後左右は無差別な殺し合いの光景。
 それらを突きつけられても、朽葉は折れていられない。

(鴇だったら折れない。絶対に。だから私だって、この心を曲げない)

 一時の熱病に浮かされて全面戦争などという事態を、朽葉は決して許さない。

(沙門様の教えを思い出せ。禅の境地を思い出せ。心静かに。決して穢れに身を委ねない意思を持って、研ぎ澄まされた一本の剣で在れ)

 朽葉は瘴気に意識を持って行かれまいと、心を保てそうなものを片っ端から頭に描き、再び乱戦の中に飛び込もうとした。


もういいよ


 ――その声は、天から降ってきたものに聞こえた。


悪い夢はおしまいにして、みんな、おうちに帰りましょう?


 朽葉が天を仰いだ時だった。

 不忍池に屈んで彫像のように動かなかったがしゃどくろが、内側から割れて粉々になった。

 呆然と空一面に広がる骨片を見上げるしかなかった。

「落ちて、来ない?」

 そう。砕け散ったがしゃどくろの骨片は、一つも地に落ちることなく滞空している。それがありえない光景であることくらいは朽葉にも理解できる。

 ありえない光景の中心に、もっとありえない人物を、朽葉は見つけた。

「くう!!」

 両目を閉じ、受け入れるように両腕を広げているのは、白い翼で滞空しているくうだった。

 骨片は落ちるどころか、淡く光り、空へ向かうくうに導かれるように空へと昇っていく。

 やがて全ての骨片が天頂に至った時、世界は闇に包まれた。

 藍色の空と、そこに輝く星々。
 時間の法則を軽々しく無視して、世界は夜になったのだ。

 呆気に取られて夜空を見上げていると、星の一つが煌き、流れた。

 そうすると、満天の
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